宇宙ベンチャー「ispace」が大型増資をする思惑 株価上昇前提で調達手法の利点を強調する事情

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今年3月に実施した海外での公募増資では、新株の発行数が当初発表の最大2059万1900株に対し、実行できたのは半分の1025万株だった。調達額も当初見込みの145億円から84億円弱に下振れた。

岡島氏は「需要自体は当初のブックサイズをカバーできるものが集まっていた。ただ、投資家の方々と話をする中で、株価へのインパクトも考えて、最低限必要な資金を得るためのサイズに調整した」と、希望額を集められなかったわけではない、と説明する。

もっとも、3月の増資発表時の株価は1000円前後で、1株871円での増資だった。今回、1回目の増資は602円、新株予約権の行使価額は828円台。結果論だが、3月に最大限必要な資金を調達しておいたほうがよかったことになる。となれば、1回目は最低限必要な金額を調達し、2回目以降の株価上昇のストーリーにかけるしかなかったというのが実態ではないか。

4月以降、株価が大きく変動する可能性

順調に4回の増資が実行され今期末に債務超過を回避できたとして、その先を見据えると、来年4月以降に控える月面着陸の成否が株価を左右する分水嶺になりうる。仮に失敗すれば株価は大きく下がり、以降の増資の条件が一層悪くなることが考えられる。

月面着陸の再挑戦の結果が出る前に、少しでも多くの増資をしておきたい――。今回のファイナンスのスキームは、株価上昇前提で楽観的に見える。だが、実際には悲観シナリオに備えた布石なのかもしれない。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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