医局に入らないことを決めた医師の"その後" 辞める前に知っておくべき「リスクとリターン」

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一例を挙げると、3年目に入局したらまずはその医局の関連病院と呼ばれる病院に1年ずつ3カ所行く。そこで外科の基本を叩き込まれたら、次は大学病院で3年間働く。その後、よほど他に希望がなければ大学院に入学し、医者をやりつつ研究をする生活を4、5年やって(うまくいけば)医学博士となる。その後はまた関連病院に行き手術の修業を数年し、その後はまた別の関連病院に移るか大学病院に戻るかする。こんな具合だ。

とても整った教育システムであり、かつ地域に定期的に医者を派遣できる仕組みだ。ここに入れば、まあよほどのことがない限りは一人前の外科医になれる。

僕は情報を集めた。医局に入った外科医、入らなかった外科医から話を聞いた。そして自分なりにまとめた結論はこうだった。

「医局に入ると確実に一人前の外科医になれるが、飛び抜けた技術を持つ外科医になれなそうだ」と。そして、「医局に入らないと、下手したらひどい外科医になってしまうが、飛び級をしてより高いレベルの外科医になることができる可能性がある」とも考えた。

おおげさに言えば、この世のすべてのものは、リスク(危険や良くないこと)をあるある程度取らなければ、人と違うレベルになることはできない。人と同じことをしていては、人と同じ結果しか出ないのだ。

「暗闇でジャンプ」

だから、僕はこの外科医人生を危険なほうに賭けた。自分の才能を信じた、というのはカッコつけすぎで、大丈夫かな、ダメかもな、でも平凡で終わりたくない、だったら挑戦してみたい、と選んだのだ。

まるで「暗闇でジャンプ」するような気持ちだった。着地ができなければそれでゲームオーバー。

でも、「選択」とは、何かを選ぶことではない。選んだ選択肢があとから「やっぱり大正解だったな」と言えるように、人が休んでいる間におそろしいほどの努力をして現実世界を捻じ曲げることだ。

僕はその覚悟を持って、医局に入らないことを自分で決めた。

「先のことはまた考えればいい」という先輩の言葉は背中を押してくれた。

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