障害者への合理的配慮の義務化で何が変わるのか 「障害者差別解消法」の改正を怖がる必要はない

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注目すべきは、どちらのケースも社会的な批判にさらされただけでなく、法律に違反しているということで訴えられている点です。その根拠となるのが、世界初の障害者差別禁止法として1990年にアメリカで成立したADA(障害を持つアメリカ人法)です。この法律によって、アメリカ、そして世界の障害者対応を取り巻く状況は大きく転換しました。

ほとんどの先進国において、「beyonce.com」で見受けられたウェブアクセシビリティの課題は、企業にとって深刻なリスクとなります。しかし日本では、まだあまり認知されていません。

また、映画館における聴覚補助システムは、アプリの導入によって広がりましたが、視覚障害者向けの対応は進んでいません。上映するすべての映画に音声ガイドをつけているのは、国内では私の知る限り、東京都北区にあるシネマ・チュプキ・タバタ、ただ1カ所です。

日本でこうした取り組みが進んでいない要因は、前述したように民間企業において、合理的配慮の提供が努力義務にとどまっていたためでしょう。法に触れない以上、優先順位がどうしても低くなってしまうのは仕方のないことかもしれません。

他に要因として考えられるのが、アメリカと日本では訴訟の脅威がまるで違うことです。アメリカの弁護士数は132万人で、弁護士1人当たりの国民数は251人。日本の弁護士1人当たりの国民数はおよそ2850人なので、単純計算すると、日本では1人の弁護士がアメリカの倍近い事案を担当することになってしまいます。

もちろん、そんなことは実際には不可能で、訴訟件数そのものがアメリカに比べて圧倒的に少ないために、問題が顕在化しづらい状況にあると思われます。

障害者対応に企業の大小は関係ない

状況は確実に変わりつつあります。まず、アメリカにおけるADA関連の訴訟件数は、2013年からの8年間で3.2倍に急増しました。

ここで思い出していただきたいのが、2000年以降、企業経営に関するさまざまな制度やルールがアメリカで生まれ、次いで日本でもビジネスに大きな影響を与えてきたことです。コーポレートガバナンスや情報開示をめぐって次々と誕生するルールに頭を悩ませ、対応に追われた経験を持つ方も少なくないはずです。

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