ソフトバンク系「PayPayアセット」突然の"幕引き" 運用会社が事業を終了すると、投信はこうなる
基本的に投資信託の信託財産は、受託者である信託銀行で分別管理され、財産は保全されることになっている。
ただ、投資信託は「繰上償還」といって、信託期間の満了前でも運用が打ち切られ、償還されるケースがある。信託約款には「繰上償還条項」が記載されており、運用資産が一定水準以下になるなど、運用の継続に支障を来す恐れが生じた場合、ファンドを保有している受益者の決を採ったうえで、繰上償還が決定する。
この繰上償還条項によって、ファンドの運用が信託期間満了前に打ち切りとなったケースはあったが、今回のように、投資信託を運用する会社が事業存続を断念するのはレアケースだ。
過去、公募投資信託を設定・運用している運用会社で事業を継続せず、廃業に至った事例としては、2012年のムーンライトキャピタル、2021年のあいグローバル・アセット・マネジメントがある。両社ともその時点で、運用していた公募投資信託は繰上償還となった。
気になるのは、PayPayアセットマネジメントの事業終了に伴い、同社のファンドを保有している受益者への対応だろう。これに関しては、運用している全12本のファンドのうち、4本が繰上償還され、残り8本については同社株主のアセットマネジメントOneへと運用が移管される。
繰上償還となる4本はいずれも成長投資枠
繰上償還されるファンド4本の純資産総額は、10月15日時点で「PayPay投信バランスライト」が12.9億円、「PayPay投信 米国株式インデックス」が8.3億円、「PayPay投信 NASDAQ100インデックス」が27.7億円、「PayPay投信 NYダウインデックス」が9.3億円となっており、規模は小さい。いずれも新NISAの「成長投資枠」の対象だ。
繰上償還日の確定はまだ先だが、この4ファンドについては、同社が事業を終了させる2025年9月末までに運用が停止され、その時点の基準価額で償還される。その基準価額が購入時に比べ、値下がりしていたら、受益者は償還に伴って損失を被ることになる。
一方、残り8本のファンドのうち5本は、NISAの「つみたて投資枠」の対象商品となっているが、どれもインデックス型ファンドである。運用はアセットマネジメントOneへと移管されるので、保有し続けたとしても、別段、大きな支障は来さないだろう。
10月15日時点で、PayPayアセットマネジメントが運用する12本の公募投資信託の純資産総額は538.4億円。そのうち最も純資産総額が大きいのは、「LOSA長期保有型国際分散インデックスファンド」の191.2億円で、最も小さいのは「PayPay投資信託インデックス世界株式」の2.4億円だ。
本来なら2億円規模のファンドだと、有無を言わせず、繰上償還の対象になると思われる。だが、そうならずにアセットマネジメントOneへ運用移管されるのは、PayPay投資信託インデックス世界株式がつみたて投資枠の対象だからと考えられる。