小学校の先生「過酷すぎる労働環境」変えるカギ、授業数多い真因は義務教育標準法 教員数を決める「学級数×係数」に改善必要な訳

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実際、中学校教員らも忙しいが、冒頭の表のとおり、中学校や高校の担当授業数(持ちコマ数)は小学校と比べて、ずいぶんマシである。高校にいたっては1週あたり10コマくらい小学校より少ないし、給食指導もない。しかも、中高は教科担任制なので、1回分の授業準備で、複数クラス「使いまわす」こともできるが、小学校の先生は毎時間の準備が必要だ。

高校のほうが高度な内容を教えるから大変だ、という見方はあろうし、私も高校の先生の専門性をリスペクトしているが、小学生相手に基礎基本を教えることだって、とても高度なことだ。読者のみなさんも、例えば分数の割り算をわかりやすく教えることはできるだろうか?

別に、小中高でいがみ合ったらよい、と言いたいわけではないが、小学校の先生はもっと怒っていいと思う。怒る先は、人手も予算も付けない中央政府(文部科学省、財務省)と国会に対してだ。前述のデータを見たら、海外の小学校教員なら、ストライキものではないかと思う。なお、日本の公務員は労働基本権が大きく制約されており、ストライキは違法となる。

以上のことから、日本の先生は従順すぎる、と述べた。おそらく、こうした「格差」があることを知りもしない教員も多い。しかも、教職員組合への加入率も下がっているので、勉強する機会は少ないし、声も上げにくい。

労働基本権のことも含めて、日本の先生たちは、なるべく抵抗しないように、いわば牙を抜かれてきた歴史があるわけだが、本人たちは忙しく走り回ってはいるが、牙を研ごうとしていない。小学校等の先生は授業研究には熱心だが、自分たちの労働環境や勤務条件についても、もう少し関心を高めたほうがよいと思う。

文科省の認識と、平均思考の危うさ

こうした事態について、文科省はもちろん知っているし、問題意識がないわけではない。だが、私の個人的な見立てとしては、まだまだ本気度が低い。

先日8月に出たばかりの中央教育審議会の答申でも、以下の言及がある。

○ 教師にとって、週時程の中で授業を担当しない時間が少ない場合に、教材研究を含む授業準備や成績処理等の業務を主に放課後等に行わざるを得なくなり、結果として、教師の時間外在校等時間が長くなる要因となるため、持ち授業時数が多い場合にはその軽減が必要である。

○ 令和4年度学校教員統計によれば、教師の週当たりの平均持ち授業時数は、小学校で24.1 単位時間、中学校で17.9 単位時間、高等学校で15.4 単位時間となっており、小学校は、教師が授業にかける時間の割合が中学校及び高等学校よりも多く、持ち授業時数の軽減と業務の精選・適正化を併せて図る必要がある。

出所:文科省「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について
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