34都道府県11政令市で4739人の教職員が未配置

全日本教職員組合(以下、全教)は今月、「教育に穴があく(教職員未配置)」実態調査結果(2024年10月1日時点)を公表し、教員の数が本来必要な数に達していない「教員未配置」が、34都道府県11政令市で4739人に達していることを明らかにした。

5月1日時点に続く今年度2回目の調査で、全教・教組共闘連絡会に参加する組織を通じて、教育委員会や組合員に調査用紙を配布するなどして教職員未配置の実態を集約した。

その結果、34都道府県・11政令市から回答があり、教職員未配置数は小学校が2248人といちばん多く、中学校1304人、特別支援学校512人、高等学校385人、小中一貫校・義務教育学校・中等教育学校59人、校種不明231人と続き、合計4739人だった。

5月に実施した調査で回答のあった30都道府県8政令市を抜き出して比較すると、未配置の総数が2947人から4076人へと約1.38倍になっていた。校種別だと小学校で約1.37倍、中学校で約1.35倍、特別支援学校で約1.36倍になっており、年度初めよりも状況がさらに厳しくなっていることがわかった。

実際、なぜ教職員の未配置が起こっているのかを見てみると、「代替者の欠員」が2061人と全体の約44%で最も多い。続いて「定数の欠員」が877人で約19%、また途中退職者も145人で約3.1%だった。

「代替者の欠員」の中では「産育休」代替の欠員が887人と「定数の欠員」より多く、「病休」も735人と多い。とくに産育休や定数の欠員は、事前に欠員が出ることを現場でもわかっていることが多いと予想されるが、それでも人員が配置できていないということだろう。

未配置に対する対応としては、「非常勤等で対応」が550人で59.2%、「見つからないまま」は365人で39.3%、他校からの兼務は7人で0.8%だった。

非常勤で配置ができたとしても、授業の穴のみを埋めて校務分掌などのほかの業務は埋まらない、また人的措置ができない場合は校内の教職員でやり繰りをしたり、少人数授業のとりやめなどで対応しているようだ。

さらに「教員以外」の職員についても欠員が報告されていて、事務職員や特別支援学校の調理員、介助員についても未配置が起きており、学校現場全体で人手不足が起きていることがわかる。

教職員の未配置で「負の連鎖」が起きている

今回の調査では、子どもたちへの影響や変化、学校現場での対応の実態や教職員の様子なども自由回答で聞いている。教職員の未配置が続くと、子どもたちが不安になったり、授業や学校の運営にも影響が出ている様子がうかがえる。

・病休が2名同時に出て、途中から担任が来ない状況は不安感を持ったと思う。長期になるにつれて「ウチの担任はどうしたんかな」と周りの教員に聞いたりしていた。(高校)

・4月から今も担任不在で、交代で教職員が対応しているために、子どもが落ち着かない。未配置が原因で新たな荒れに発展していく。(小学校)

・当面、2学期は家庭科の授業はやらず、技術の教科を行っている。3学期に詰込み授業にならないか心配。(中学校)

・教頭や校長まで授業を持っている状態。授業の進度もとても遅れたり、授業内容も大きく変わるので戸惑いはある。(義務制)

・生徒に目が行き届かず、トラブル(ケンカ、異食、ケガ)に対応できない。(特別支援学校)

・未配置のクラスで子どものアレルギーに対応できず、命にかかわる事故が起きた。(特別支援学校)

出所:全日本教職員組合「教育に穴があく(教職員未配置)」実態調査結果から一部抜粋

 

教職員の未配置によって、負の連鎖も起きている。欠員を埋めることができないために、管理職や同じ学年の教員が授業を受け持つことになり、担当時数が増えて時間外勤務も多くなる、それが長く続くと疲弊して、病休者が出るといった具合だ。

・途中退職された先生の代わりに、教頭先生が授業を受け持ち、さらに忙しくなって、とても大変そうだった。人が少ない分、分掌や部活など、あらゆる場面で、一人一人の負担が増えた。(中学校)

・空き時間の教員・教務主任を総動員して業務・授業に対応して、全くゆとりのない、トイレに行くにもはばかられる状況となっている。(特別支援学校)

・家庭科教員がいないので、英語の教員と教頭が指導。※まだまだこんな状況が多々あると思います。ひどい状況です。子どもにとってマイナスですし、教員の負担も大きすぎます。(中学校)

・校内の担任が休みに入り、未配置対応のためそれまで専科だった教員が担任をすることになったが、急な変更で専科だった教員も休みがちになっている(小学校)

・未配置の学校では、ドミノ式に病休者が出てくる状態。(高校)

・県教委が報告する教員未配置だけでなく、風邪などの病欠、お子さんの発熱による特休などが重なると学校は人手不足で非常に危険な状態。(小学校)

・結局支援級にしわ寄せがいっています。通常級を担任していた常勤職員がいなくなる→非常勤職員しか確保できない→支援級を受け持っていた常勤職員を通常級担任にして、新しく来た非常勤職員に支援級を担当させる。こういう状態が続いているので、支援級担当の教員が何度も入れ替わります。支援級の教育水準が保てませんし、この調整を図る特別支援教育コーディネーターの負担がまた過重になります。今のところ支援級児童の保護者が受け入れてくれているから何とか学校が回っていますが、ほんとうに申し訳ない状態で、抗議を受けても仕方のない状態です。(義務制)

出所:全日本教職員組合「教育に穴があく(教職員未配置)」実態調査結果から一部抜粋

教職員定数の5827人増員が閣議決定したが

社会的にも「教員不足」が話題となって久しいが、なかなか改善が進まないのはなぜなのか。それはさまざまな施策が複雑に絡み合って起こった問題だからだろう。

その1つに、正規教員を配置せずに臨時的任用教員や非常勤講師を含めた学校運営を進めてきたということがある。

「少子化なのに教員を増やす必要はあるのか?」という声もあるが、子どもの数にあわせてクラス数も減っていれば問題はないが、通級指導教室や特別支援学級の増加など、多様化する子どもたちの支援で学級数は増加している。また英語やプログラミング教育の導入などで、教える内容も増えている。

近年は、団塊世代の退職で正規教員の採用を増やしてきてはいるものの、学校現場で深刻になっている長時間労働問題や残業代が支払われない給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の影響などもあり、教職の人気はすっかり落ちてしまった。文科省や教育委員会が、教員志望者を増やそうとあれやこれやと施策を講じているものの教員採用試験の倍率は低迷を続けている。

そんな中、政府は昨年末、一般会計総額115兆5415億円の2025(令和7)年度予算案を閣議決定した。教職員の処遇改善として、教職調整額を2025年度に5%、2031年度までに10%まで引き上げることに加えて、教職員定数を5827人増員することも盛り込んだのだ。

だが、「自然減も考慮すると十分ではない」「教員未配置の解消にはならない」「処遇改善よりも必要なのは教員増」「その前に学校現場の業務削減が必須」といったように、教育界の反応は冷ややかだ。

全教も、教育予算の対GDP比をOECD諸国平均並みに引き上げることや抜本的な定数改善を求めるなどの提案を複数行っている。「このままでは学校は持たない」という業界全体の共通意識に、関係者は真摯に向き合っていく必要があるだろう。

<「教育に穴があく(教職員未配置)」実態調査 調査概要>
調査主体:全日本教職員組合
調査方法:全教・教組共闘連絡会に参加する組織を通じて、教育委員会や組合員に調査用紙を配布
調査対象日:2024年10月1日
有効回答数:34都道府県・11政令市
調査項目:① 教職員未配置数、② 都道府県市区町村、学校種別、未配置数、未配置の職種・教科・担任の有無、校内対応等、③ 子どもたちへの影響や変化、学校現場での対応の実態や教職員の様子などのアンケート

(注記のない写真:Graphs / PIXTA)

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