資本主義は今、曲がり角に来ているのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(1)

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マルクス・ガブリエル
マルクス・ガブリエル 1980年生まれ。ボン大学、ハイデルベルク大学などで学び、史上最年少の29歳でボン大学の哲学科正教授に就任。同大学国際哲学センター長も務める。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新実在論」を提唱して世界的に注目される(撮影:今井康一)

ガブリエル:資本主義は3つの条件を緩やかに束ねたものとして定義できます。

第1の条件は「自由契約」です。封建制度と違って、自分の労働力や能力が金銭的対価の対象となり、それを収益化するときも束縛を受けずに契約を結ぶことができます。自由契約は、支配と不正からの解放における近代的形態として資本主義をもたらしました。

第2の条件は「生産手段の私有」です。誰かが何かを所有し、リスクをとるなど何らかの条件下で再投資し、より多くの私有財産を蓄積することができます。私有財産は体系的かつ合理的に経済を進める単なる条件ですが、システムに安定性をもたらします。今日まで、不動産が資本主義の特徴として重視されてきたのはそのためです。

第3の条件は「自由市場」です。共産主義下の計画経済や戦時下の経済では、市場はコントロール可能で、そうすべきだと考えます。資本はそのような特殊な手段ではないし、人間は自由なので、市場はコントロールしてはいけません。

この3条件は、イギリスの産業革命、フランス革命、資本主義的銀行とされるイングランド銀行など、歴史の偶然が重なって生まれたものです。誰かが資本主義を発明して実践したのではありません。誰も計画しなかったことが重要なのです。

知的改革が推し進めるデジタル資本主義

名和:世の中は今、目に見える物理的資産から無形資産へと移行しつつあります。たとえば、知識やブランドは誰が所有するものなのか。人の頭の中にあるブランドイメージはコントロールできませんよね。無形資産の観点に立つと、資本主義は変わってくるのでしょうか。

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