ドルに代わる国際通貨の覇権をBRICSは握れるか ロシアで開催されるBRICSサミットに注目せよ

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いずれにしろ、新しいシステムが構築されることになれば、BRICS諸国は、ドル体制であるIMF体制から離脱することになる。2つの体制の共存が可能かどうかは、冷戦時代の米ソ対立の中で、両体制の通貨の優位性がその経済力を決めたように、ドル体制との衝突は不可避であろう。

こうした場合経済的に優位な通貨が、かつて冷戦においてドルが最終的に勝利したように、その勝利を得る。

となると、経済力の相異が決定的な衝突を生み出し、経済力があるほうが他方を屈服させ、吸収していくだろう。米ソ冷静の終結とは、ドル経済圏によるルーブル経済圏の吸収であったといえる。

経済・軍事・政治的な力はどちらに?

気になるのは現在、経済的、軍事的、政治的力がどちらに有利に働いているかである。発展途上国だとこれまで見下されてきた地域が、いつまでも弱者の立場に我慢しているわけではない。

最初に見た技術的優位が、経済的優位をつくりだし、それが軍事的優位につながり、しかも政治的にも多くの加盟国を集めつつあるとすれば、それによってBRICSは巨大な力を獲得し、西欧先進国が、発展途上国といわれた新興国に吸収されるという事態もありうるわけだ。

現在起こっているウクライナ、イスラエル問題の行方を見定めるにも、この背景にある先進諸国とBRICS諸国の対立関係の行く末を見つめる必要があるだろう。

その意味でも、カザンのBRICSサミットは注目すべきものなのである。 

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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