遅すぎた「じゃらん休刊」で露呈した"残酷な真実" "一強"だった同誌がそれでも休刊となったワケ
旅行の情報収集や予約に限らず、より便利で効果の得られるほうに変わっていくのは時代の流れでしょう。特に紙の本を買う人が減る中、『じゃらん』のような「予約するために買って、読んだら捨てる」という消費行動が、「ムダ」「エコではない」などとみなされるようになったことは痛手でした。
ただそれでも、『じゃらん』営業担当者と広告主となる宿泊施設の結び付きは、「時代が変わったから」と単純に割り切れないほど強固なものがありました。
『じゃらん』としては、「本が売れて、広告収入が入って、広告主の集客数や売り上げが伸びる」というWIN-WINの関係性が理想。
営業担当者たちは単に広告出稿を勧めるのではなく、宿泊予約を増やすために、貸切風呂や露天風呂付き部屋などの設置、特別な食事プラン、カップルや親子向けステイなどを提案するコンサルタントのようなところがありました。
1990年代から2000年代までの『じゃらん』は日本全国の宿泊施設をクライアントに持ち、前述したライバル誌・JTBの『るるぶじゃぱん』を寄せ付けない一強状態。
各地の宿泊施設で話を聞くと、判で押したように「『じゃらん』に頼るしかない」という言葉が返ってくるくらいでした。先駆者としてのアドバンテージだけでなく、提案、クロージング、足を使った努力などの営業力が優れていたのは間違いないでしょう。
宿泊施設の予約は2000年にスタートした「じゃらんnet」に引き継がれていくようです(ちなみにJTBの「るるぶ.com」は2001年スタート。2019年に終了しましたが、「るるぶ+」など別サイトに移管)。
しかし、関係者や読者の効率性が上がった一方で、「営業担当者と宿泊施設との関係性が以前よりドライになった」という話をたびたび聞くなど、「すべてがよくなった」というわけではないのでしょう。
今も収益を上げる「旅行関連本」
では、「旅行関連本のビジネスがまったく通用しないか」と言えば、まだ「YES」とは言い切れないところもあります。
たとえば、現在の旅行関連本はビジュアル重視のものが主流。デジタルではなく紙で見ることを楽しめたり、部屋に飾っておきたくなったりするような美しい写真をベースにデザインされたもので販売につなげています。
これは「やっぱり紙の本もいいな」「ここに行ってこういう写真を撮ってみたい」などと思わせる本なら売れるかもしれないということでしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら