気づけば「自分に厳しい道を選ぶ人」が陥る思考 マラソンに挑戦しながら、聞こえてきた心の声
私は学生のときでさえ、病理的な側面に重点を置き、精神疾患の原因や影響ばかりを取り上げる心理学にはどうしてもなじめなかった。
「ポジティブ心理学」についてはまだ聞いたこともなかった2011年に、ニューヨークのユニオンスクエアにある書店「バーンズ&ノーブル」で、フィットネスとボディビルのコーナーに間違って置かれていたこのテーマの本をたまたま見つけたのは、思いがけない幸運だった。
水色の表紙に目立つ黄色い文字で『本物の幸せ──ポジティブ心理学で潜在能力を発揮し、満ち足りた人生を送る』とタイトルが書かれたマーティン・E・P・セリグマンの著書だ(邦訳:『ポジティブ心理学が教えてくれる「ほんものの幸せ」の見つけ方──とっておきの強みを生かす』小林裕子訳、パンローリング)。最初の章を読み終わる頃には、人生のあの時点で探していたものが見つかったと確信した。
人が幸せを追求する中で求める5つ
ポジティブ心理学は、ほぼ「ウェルビーイング=幸せ」だけに注目する。何が人生を生きがいのあるものにするか、どうすれば人は生き生きと暮らすことができるのかを理解しようとする学問だ。セリグマンは人が幸せを追求する中で求めるものとして次の5つをあげ、「PERMA」という略語で表現した。
・積極的な関わり(Engagement)
・人間関係(Relationships)
・人生の意義(Meaning)
・達成感(Achievement)
ポジティブ心理学は単に一つのムーブメントとみなされているわけではなく、希望、知恵、創造性、勇気、精神性、責任、粘り強さといった、心理学において従来は過小評価されていたテーマの研究に関心とリソースを向けさせることに寄与した点が最も大きく認められている。
不安になったり病気にかかったりしないためだけに生きている人はいないし、充実した人生には、ただ何とか生き延びるために必要なもののほかにも、さまざまな要素が含まれる。メンタルヘルス分野のほかの大部分のアプローチとはまったく対照的に、ポジティブ心理学は「幸せの科学」とも呼ばれる。
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