ゲームとAIの長い歴史に加わる「感情認識AI」 介護やマーケティングへの応用も視野に

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プレイ後、開発者用の画面を見せてもらった。そこには、プレイ中の感情変化を示す詳細なヒートマップが表示されていた。青や緑、黄色、赤といった色彩で、ゲームの各シーンでどのような感情を抱いていたかが視覚的に表現されている。

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感情の変化を記録したヒートマップ(筆者撮影)

大手ゲーム会社と協議中、介護など他分野の応用も

OVOMINDは10月下旬以降に、ゲーム開発者向けに専用バンドがセットになったSDK(ソフトウェア開発キット)の提供を開始する。実用化に向けて大手ゲーム会社との協議も進行中だという。この技術のゲーム分野での活用は、主に2つの側面で進められている。

1つは、ゲーム開発時のテストプレイにおける感情分析だ。開発者はプレイヤーの感情反応を詳細に分析することで、ゲームの各シーンや要素がどのような感情を引き起こしているかを把握できる。例えば、あるボス戦でプレイヤーが過度のストレスを感じていることがわかれば、難易度を調整したり、事前にヒントを追加したりすることができる。また、複数のストーリー展開やレベルデザインを用意し、どちらがより好ましい感情反応を引き出すかを比較することで、より魅力的なゲーム作りが可能になる。

もう1つは、リアルタイムでの感情分析に基づくゲーム展開の変化だ。プレイヤーの感情状態をリアルタイムで検知し、それに応じてゲームの展開や難易度を動的に調整する。具体的には、プレイヤーが退屈していると感じた場合に予想外のイベントを発生させたり、逆に過度の緊張状態が続いている場合にはゲームの難易度を一時的に下げたりすることができる。これにより、プレイヤーの感情状態に合わせて常に最適な挑戦レベルを提供し、より没入感のある、飽きのこないゲーム体験を実現することができる。

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OVOMIND 共同創業者兼CTOのJulien Masse氏(筆者撮影)

将来的には、この技術をApple Watchなどの既存のウェアラブルデバイスに統合することも視野に入れているという。より多くのユーザーが手軽に利用できるようになり、技術の普及が進めば、サブスクリプション形式でサービスを提供する道が開けるという。

また、ゲーム以外の分野への応用可能性も模索している。介護分野では、言葉を話せない高齢者の感情状態を理解するのに役立つ可能性がある。さらに、マーケティング分野でも活用が考えられており、複数の製品に対する消費者の感情反応を測定し、最も好ましい反応を引き出す製品を特定するなどの用途が挙げられている。

ゲームとAIの関係は、プレイヤーの体験を豊かにする方向で着実に進化している。OVOMIND社の感情認識技術は、その最新の一例だ。次世代のゲームでは、画面を超えてゲーム内に没頭するような体験が待っているかもしれない。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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