ゴルフのテレビ中継がつまらなくなった理由 価値観を変えたネットが新しい流れをつくる

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「ゴルフツアーが小さくなっていくのは、何が原因かを考えたときに、テレビでいうと短時間の録画中継で世の中にトーナメントの一部しか見られていない、ゴルフファンとのズレが来ている。ツアーを盛り上げていくことが必要で、ネット中継という新しい文化をつくろうと思いました。独自に500人アンケートを実施したところ、テレビ中継の良くない点として、『人気選手しか映さない』『ライブで見たい』『グリーン上の映像が多い』などが挙がってきました。楽しむ点としては技術や個性、スイングの再現などがありました」

ネット中継でゴルフ場のさまざまな出来事を配信

楽しめる点をネットで満足させてみようという試みだ。視聴数は2013年に40万回超だったが、15年には150万回超、60カ国弱で1万人以上が見たという。ハンディカメラ20台以上を多用し、ゴルフ場のさまざまなところで起こっている出来事を流す。時間の制限もない。

なにより「何が起こるかわからない」スポーツの基本を伝えられる。中継ホールが決まっていて、有名(とテレビ局が判断している)選手中心、CMで途切れ、放送時間内に優勝者が決まるという録画中継にはない面を出せるのが特長だ。

テレビ中継の視聴率は下がっているとはいえ、1%でも100万人が見ているとされている。まだまだ「視聴者」の数ではテレビに軍配が上がる。それでも、ネット中継は「制作費がテレビよりも低い」「テレビでは放送しない平日も放送できる」「携帯やタブレットで画面を外に持ち出せる」「世界各国の人が見られる」などの利点もあり、その可能性は広がっている。

日本のトーナメントは男女とも韓国はじめ、海外勢に押され気味。そんな国々のファンも取り込めるかもしれない。協会にとってはネット中継の実施で肖像権料が発生するなど、新たな収入源にもなる。これからの問題は、そこからどうやっておカネを生み出すかが、ネット中継を根付かせるために必要なことだろう。

「ネット中継を楽しんでもらえる環境、文化をつくり投資価値のある市場にするか、いいコンテンツをいかに国内外の人に見てもらえるようにプロモーションするかが課題」と佐草氏。ビジネスモデルとしては発展途上だが、試合数が減って人気に陰りが出ている男子ツアーを主催・主管する日本ゴルフツアー機構でもインターネット中継に着目して模索し始めている。ゴルフ場でプレーしながら、携帯でトーナメント中継を見る、という時代が来るのかもしれない。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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