「手術中汗を拭いてもらう」外科医が実はいない訳 ドラマと現実ではこんなにも異なっている!

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というわけで、心臓マッサージとは「胸骨を激しく押し込んだり引っ込めたりして圧迫することでその後ろにある心臓を強制的に動かし、中にある血液を臓器、特に脳に送り続ける行為」といえるが、長いので、今は「胸骨圧迫」と呼ばれている。

ドラマでよくあるシーン5 成功率1%の手術に挑む

外科医が「1%の成功率にかけます」などと言っている描写を見かけることがある。これは、実際にはありえない。なぜなら、そんな確率の手術はそもそも行われないからである。

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手術は病気を治し、人を健康にするために行われるが、一方で健康を害するリスクにもなりうる。手術で病気は治ったけど、手術の合併症によって状態が悪くなるということも残念ながらありえるのだ。

そのため、手術を行う前には必ず、手術によってよくなる可能性と悪くなる可能性を考え、そのバランスを検討し、患者にもその情報を伝えて理解してもらい、最終的に行うかどうかの判断をする。なので、1%の確率でしか成功しない手術ならば、やることはないのである。

手術をしなければ100%死んでしまう、でも手術すれば万が一の可能性で救えるかも......という状況はほとんどありえないのだ。外科医が「今から99%成功する手術をします」と言ってもちっともドラマチックではないので、ドラマや漫画では多少脚色されているのだろう。

「成功の定義」も現実はドラマとは異なる

そもそも、何をもってして成功というのか、“成功”の定義も必要である。手術室を生きて出ることが成功の手術もあれば、20年先まで健康に生きて初めて成功といえる手術もある。心臓の手術は完璧にうまくいったが、合併症で脳に異常が起きたらそれは失敗なのだろうか?

そのあたりの定義づけも、外科医と患者の間で共通の認識、共通のゴール、共通の成功の定義を持つことが、とても大事なことである。

北原 大翔 シカゴ大学心臓外科医・NPO法人チームWADA代表理事

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きたはら ひろと / Hiroto Kitahara

2008年慶應義塾大学医学部卒業。2011年慶應義塾大学外科学(心臓血管)入局。2015年東京大学心臓外科にて研修。2016年旭川医科大学心臓外科にて研修。シカゴ大学心臓外科にて臨床フェロー。2017年、医療関係者の海外留学・就労支援や、海外で働く医師同士の交流の場を提供する「チームWADA」を設立。2019年メドスターワシントンホスピタルセンター心臓外科。2021年より現職。YouTuber本物の外科医としても活動し、動画総再生回数は3億回を超える。

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