「お前のことがムカつく」友人のメールに思うこと 燃え殻「迷惑をかけたあの日のこと」と彼の記憶

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渋谷の喫茶室ルノアールで、そんな調子で三時間くらいふたりで話した。店を出ると、そこは週末の渋谷。これから飲みに出かける人の波で、うまく歩けないくらいだった。

「今日は疲れた。いい意味だけど……」と彼が帰り道、僕に言ってくれた。半年間、コンビニ弁当と飲み物を届けてくれたお礼を、僕はそのときやっと言えた。「いろいろだな」と彼はもう一度笑う。

その夜、彼から一通のメールが届いた。「夜になると苦しいよ」という内容だった。一筋縄でいくことなんて、いままでもこれからもほとんどないだろう。それでもいい。根気よく傍らに誰かがいてくれれば、その誰かになれたなら、人生はどうにかやり過ごせることを、僕はもう知っている。

日々を生きる上での避難場所

日々を生きる上で、いくつか避難場所を持っている。例えば、スッとフェイントをかけて逃げ込める、絶対知り合いが来ない喫茶店。治安のいい図書館。バカみたいに人でごった返さない映画館。自分にとって品揃えがいい書店。

その中でも映画館は、東京からちょっと外れた場所にあるほうがいい。僕の行きつけは『シネマ・ジャック&ベティ』。横浜市中区にある名画座。エスカレーターで二階に上がると、味のある売店がまず現れる。館内はこぢんまりとしているが、椅子は深く座れて、窮屈な気持ちにならない。かかっている映画がだいたい好みなのも嬉しい。

東京で打ち合わせが終わって、まだ昼くらいだったとする。「急に上げないといけない原稿がない、でもホトホト疲れた」。そんなときは、東横線に乗って横浜まで出てしまう。そこから乗り継いで桜木町まで行く。野毛の繁華街の、昼からやっている飲み屋で一杯ひっかけ、程よく酔っ払ったら、『シネマ・ジャック&ベティ』を目指す。

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