中国の民営自動車大手、吉利控股集団(ジーリー)の創業者で董事長(会長に相当)を務める李書福氏は9月20日、同社の新たな経営指針「台州宣言」を発表した。
新指針では、事業領域を戦略的に拡大してきた従来の路線から、事業を戦略的に集約(して効率を重視)する路線への転換を表明。一部事業の廃止・再編にも踏み込み、野放図な事業拡大は行わないとしている。
台州宣言の命名の由来である浙江省台州市は、吉利の創業の地だ。李氏はここで1986年に同社の前身を設立。冷蔵庫やオートバイなどの製造を経て、1997年に自動車事業に進出した。
吉利は2010年にスウェーデンの乗用車メーカー、ボルボ・カーの買収に成功し、その後の急成長のきっかけをつかんだ。2017年には(外資系合弁メーカーを除いた)中国の独自ブランド車メーカーの販売台数ランキングでトップに立ち、5年連続で首位の座を維持した。
EVシフトでBYDの後塵拝す
だが、2022年に比亜迪(BYD)に追い抜かれて以降、両社の販売台数の差は開きつつある。BYDの2024年1月から8月までの累計販売台数は232万8000台と、前年同期比29.9%増加。これに対し、吉利の販売台数は201万1000台、前年同期比の増加率は21.6%だった。
ここ数年のBYDの躍進は、中国自動車市場の急速なEV(電気自動車)シフトの流れをしっかりつかんだことが大きい。同社は2022年4月にエンジン車の生産停止を発表し、EVとPHV(プラグインハイブリッド車)に経営資源を集中した。
ここまで大胆な決断は、吉利ができなくても無理からぬところがある。とはいえ、結果的にEVシフトへの対応が遅れたのは明らかな失策だった。
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