自主映画「侍タイ」が異例ヒットした"4つの理由" 「カメラを止めるな!」と共通する「ヒットの法則」
「侍タイムスリッパー」は、はたして「カメ止め」の再現と言えるのだろうか? そうだとすれば、他のインディーズ映画も同様の手法で大ヒットさせることができるのだろうか?
筆者の見解としては、「必ずヒットさせられるわけではないが、ヒットの確率や、ヒットの度合いを高めることはできる」というところだ。
では、どうすればよいのか。この点について、詳しく考察してみたい。
なぜ「カメ止め」の再現は難しいのか
筆者は、広告会社に19年勤務し、映画のプロモーションにも何度か携わったことがあるのだが、映画作品のマーケティング戦略は、他の商材と比べてかなり特殊である。
マーケティング論の基本概念に「マーケティングミックス(4P)」がある。このフレームワークは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)およびプロモーション(Promotion)の4つの要素を有効に組み合わせて、マーケティング戦略を計画、実施していくというものだ。映画作品は、これら4つの要素いずれにおいても、制約条件が大きく、特殊である。
最も特徴的なのが「価格(Price)」だ。劇場映画は、「製作費が安いから」「ヒットが見込めないから」といって、入場料を自由に下げることはできない。
ハリウッド映画の中には、数百億円の制作費をかけた作品もあるが、300万円の制作費しかかけていない「カメ止め」のような作品も、ほぼ同一の入場料で戦わざるを得ない。
「流通(Place)」のコントロールも難しい。制作側が「多くの人に見てもらいたい」と思ったら、上映してくれる映画館を十分に確保する必要があるが、インディーズ映画ではそれも簡単ではない。
最近では、劇場公開と並行して、あるいは劇場公開に先立ってインターネット等で配信を行う場合もあるが、一般的とも言い難い。
「製品(Product)」については、何度も劇場で鑑賞したり、DVDや配信で再視聴したりする人たちもいるが、大半の観客は一度だけ鑑賞する。つまり、映画作品はリピーターがほとんどいない特殊な「商品」である。
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