インド「ヒンドゥー教の国を脱却」した"民衆の力" 人民党はなぜ議席数を減らすことになったのか

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2024年も、モディは総選挙直前にインド人民党だけで370議席を獲得し、与党連合で400議席を獲得すると目標を掲げた。世論調査や出口調査の多くがインド人民党の圧勝を予測していた。

しかし、勝利を祝うはずのインド人民党の集会場に集まった党関係者の表情は暗かった。党の繁栄に掛け声をあげる、いつものシュプレヒコールも反応が薄い。

なぜ人民党は議席数を後退させることになったのか。強権的とも取られる権力の集中に対する警戒感が広まったのかもしれない。総選挙の投票直前には、野党有力指導者が汚職の疑いなどで逮捕されて長期間拘禁され、政権に批判的なメディアへの圧力も強まっていた。

イスラム教徒など、宗教的少数派に対する暴力が放置され、ヒンドゥー至上主義の色彩が強まりすぎていたことに有権者が反応したのかもしれない。

モディ政権の10年間にヒンドゥー至上主義は加速した。特に問題となったのはイスラム教徒の移民を排除した2019年の市民権法改正だ。これは宗教的な帰属を国籍の要件とするもので、他宗教との共存を前提とする世俗主義の伝統のなかで生きてきたインドのイスラム教徒にとっては、受け入れ難い法律だった。

キャスティングボート握る地域政党

インドにはイスラム教徒の大きな政党がない。このため、特定政党の議席数の変化でイスラム教徒の動向を直接見ることができない。イスラム教徒の有権者の意識が見えにくいのが、インドの政治の特徴だ。

議席数80と最大議席数を持つウッタル・プラデーシュ州では、インド人民党が大きく後退したのに対し、イスラム政党ではないがイスラム教徒を支持層に持つ地域政党が勢力を回復する形となった。同様にイスラム教徒の支持が多い西ベンガルの地域政党も議席数を大きく伸ばした。

ただ発展途上社会研究センター(CSDS)によると、インド人民党の全国での得票率の低下は、前回とくらべて1%以下の低下に留まっていて、実は大きなインド人民党離れが起きたとは決していえない。

議席獲得には至らなかったものの、モディが繰り返し遊説に訪れた南部タミルナドゥ州などでは、インド人民党は得票率を伸ばしさえしている。モディ人気は衰えていなかったのだ。

インド政治のなかで3期連続で同じ人物が首相を務めるのは、初代首相のジャワハルラール・ネルー以来の快挙である。CSDSの調査では、前回から6%低下したものの、依然として投票者の59%がモディ政権に満足していると回答している。

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