カリスマ「実演販売士」と新人の決定的な差 5つの差が売り上げ5倍の開きを生む

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布巾の商品説明もそこそこに、取り出したのは油まみれのカセットコンロ。実はこれ、前日に数種類の油を混ぜ合わせて塗りたくり、ドライヤーで乾燥させ、家庭の頑固汚れを再現したもの。客に「お宅の台所、こんな風になってない?」と、「あるあるな状況」を提示。「わ~! ウチみたい!」と客が乗ってきたその目の前で、商品を使って悩みを解決。単なる「へぇ~」ではなく、「今すぐ欲しい」という気持ちを瞬時に引き出したのだった。

実演した「モノ」をお土産にする

そしてもうひとつ。紐をひっぱるだけで野菜などの食材を簡単にみじん切りにできるフードチョッパーを販売しようとした時。新人販売士がにんじんなどのみじん切りを見せる一方、太田氏は、まずたまねぎのみじん切りを披露。続いて、ゆで卵、パセリ、マヨネーズ、お酢などを次々と投入。あっという間に自家製タルタルソースを作ってみせた。

さらには、キャベツ、にら、ニンニク、ショウガ、そして豚の小間切れを投入、一気にみじん切りして、ギョーザのタネが完成!集まったお客が大拍手で盛り上がるなか、さらに用意しておいたギョーザの皮で、出来たばかりのタネを包み、最前列の客にお土産として配った。

太田:買おうなんて思わなくていいの! 見てくれてありがとう! お土産よ!!

もちろん、これも計算しつくされたテクニック。専門的には「返報性(へんぽうせい)」というのだが、これは「無料でモノをもらうと、ついつい何かお返しをしたくなる」という心理をついたもの。

そしてこの後、商品は面白いように売れていった。

5.自腹を切って独自のやり方を見つけよ!

自分が担当する商品は必ず自腹で購入、徹底的に使いこなす。
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太田氏いわく、担当する商品はどんな高額なものでも必ず自腹で購入し、徹底的に使いこなしてから実演販売に臨むという。そうすることで、説明書にはない、さらなる便利な使い方を発見し、商品をより強力にプッシュできるようになるんだとか。

結果、新人は9596円の売り上げ。カリスマ販売士の太田氏は4万6212円の売り上げ。その差はおよそ5倍にふくらんだ。

周到な準備と、緻密な戦略。実演販売士は、単なるおしゃべり上手なお兄さんではなかった。カリスマと新人の決定的な違いを生む5つの差は、一般的なビジネスにも通じる心得でもある。

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