映画「ラストマイル」ヒットの鍵は"動画配信"戦略 「鬼滅の刃」が新たな映画化への道筋を作った

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フジテレビは『海猿』もシリーズ化して製作し、1作目の17.4億円が2作目で71.0億円になり、3作目80.4億円、4作目73.3億円とそれぞれ特大級のヒット、また『HERO』(81.5億円)や『のだめカンタービレ』の前後編(41.0億円、37.2億円)など、10億円を超えればヒットと言われた邦画の興行収入をびっくりするような数字で塗り替えていった。TBSも『ROOKIES-卒業-』(85.5億円)がメガヒット、テレビ朝日は『相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km東京ビッグシティマラソン』(44.4億円)という長い副題で「相棒」を映画化しヒットさせた。人気のテレビドラマを映画化すればメガヒットする方程式が成立した。

ところが2010年代に入るとテレビ局の放送収入が行き詰まり、ドラマ映画化の勢いが弱まる。40億、50億が当たり前、とはいかなくなった。それでもドラマ映画化の元祖フジテレビは2015年に『HERO』の2作目(46.7億円)、2016年は『信長協奏曲ノブナガコンチェルト』(46.1億円)、2018年には『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(93.0億円)などのメガヒットを残している。2020年には日本テレビ『今日から俺は!!劇場版』(53.7億円)がヒットし、TBSは2023年に劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(45.3億円)、同年にフジテレビが『ミステリと言う勿れ』(48.0億円)のヒットを放ったことも記憶に新しい。

だが2000年代にフジテレビが打ち出した「ドラマ→映画」のヒットの方程式からすると、2010年代以降のドラマの映画化はスケールダウンと偶然の産物であることが否めない。やはりテレビというメディアの地盤沈下が、そのまま興行収入に繋がっているのだろう。

ドラマと映画が、配信を通して双方向で楽しめる

ところが今年、TBSは『ラストマイル』で新たな方程式を成立させた。「ドラマ→配信→映画」の構造をつくり、また矢印は双方向でどっち向きにもなり、人によっては何度も行ったり来たりする。ドラマと映画が配信を通して双方向で楽しめる新しい方程式ができたのだ。

そういえばTBSの2019年のドラマ「グランメゾン東京」がいま、NetflixとU-NEXT、TVerで配信されている。この冬に映画版『グランメゾン・パリ』が公開される布石かもしれない。

フジテレビの「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフ『室井慎次 敗れざる者』『生き続ける者』も立て続けに公開されるが、過去作の配信は自社サービスのFODとU-NEXTくらいのようだ。地上波で一挙放送とのことだが、それで事足りるのか心配だ。

『鬼滅の刃』戦略を応用すれば、ドラマの映画化は2000年代のようなメガヒット作をまた生める可能性がある。もちろん、何より大事なのが面白いコンテンツを作ることなのは変わらないが。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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