誰がなぜ?北陸新幹線「米原ルート」再燃の震源地 小浜・京都ルート2025年度末着工は課題山積

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ただ、国交省は北陸新幹線の東海道新幹線乗り入れは運行管理システムの違いなど、技術的な理由から困難と考えている。

運行管理システムは東海道新幹線がJR東海の「COMTRAC(コムトラック)」、北陸新幹線がJR東日本の「COSMOS(コスモス)」を採用している。元はどちらも国鉄時代に開発されたコムトラックであるが、国鉄分割後、JR東海は東海道新幹線の輸送力増強に対応する形でコムトラックの機能を拡充したのに対して、JR東日本は東北新幹線・上越新幹線に北陸新幹線が加わり、山形新幹線、秋田新幹線など新在直通への対応も必要となった。そのため、1995年に全面的なシステムの見直しを行い、新たにコスモスを開発した。

このように開発の方向性が大きく分かれた2つのシステムを統合するのは困難だというのが国交省の考え方である。馬場・前原両氏の提言では「財政支援による運転保安投資を行えば直通運転が可能になる」と楽観的だが、過去に銀行のシステム統合でトラブルが何度も起きたことを見ればそんな単純な話ではないように思われる。

2025年度に着工できるのか

小浜・京都ルートの着工に向けた動きが進むにつれ、米原ルートを求める動きは沈静化すると思われる。しかし、着工が問題なく認められる保証はない。進行中の環境影響評価手続きの過程で、環境対策などが指摘される可能性があるし、着工5条件の1つに数えられている並行在来線もクリアすべき課題である。

整備新幹線が開業すると、これと並行する形で運行する在来線から新幹線に乗客が流れ、並行在来線の経営がJRにとって重い負担となるため、沿線自治体の合意を前提に並行在来線を経営分離することがある。その場合、沿線自治体や民間が第三セクターの鉄道会社を設立し路線を維持するという流れになる。

北陸新幹線 並行在来線
北陸新幹線・金沢―敦賀間の開業前、在来線の北陸本線を走る特急列車。この区間は並行在来線として第三セクター化された(編集部撮影)

では小浜・京都ルートにおける並行在来線はどの路線なのか。考えられるのは湖西線だが、滋賀県は小浜・京都ルートは滋賀県内を通らないので湖西線は並行在来線ではないと主張し、経営分離にクギを刺す。

仮に並行在来線の問題も解決して首尾よく着工にこぎつけたとしても最長28年の工事期間中に社会情勢は大きく変わる可能性がある。今からおよそ30年後の経済や社会にとって、北陸新幹線の全線開業はどのような意味を持つのだろうか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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