最年少→最高齢に交代、仏首相「想定外」人事の背景 73歳のタフネゴシエーター、バルニエ氏の素顔

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バルニエ氏の名前は首相候補者として頻繁には挙がっておらず、想定外の人選となった。無論、与野党が拮抗し、単独過半数の政党が存在しない中での今後の政権運営は容易ではない。バルニエ氏は早速、左派からの反発を考慮し、閣僚には左派も入れると約束した。

またバルニエ氏は、首相就任を受諾する条件として、政府の独立性を確認した。左派の反発が強すぎれば、政策決定が影響を受けることは必至であり、マクロン氏の意向を全面的に反映できない局面も考えられるからだ。

このまま政治が混乱し、マクロン氏が退任に追い込まれるか、レームダック化することを考えれば、バルニエ氏の提案をマクロン氏は拒否できなかったはずだ。理由はマクロン氏の方針を理解し、支持する人物を首相に任命すること自体が不可能に近い状況だったからだ。

バルニエ氏は就任後のインタビューで「大統領は議長、政府は統治者」と答えた。大統領は政策審議を正常に行えるよう見守る立場であり、議会が最終決定し、政府が国を統治するという意味で、「大統領は外交、首相は内政」という本来の不文律を守り、大統領が内政に口を出さない状況を望んだ。バルニエ氏は過去に何度もマクロン政権の政策に反対したことがあり、マクロン氏のイエスマンにはならない決意がにじみ出ている。

ブレグジットで交渉を担ったタフネゴシエーター

前任のアタル氏は史上最年少の34歳で首相となったが、後任となったバルニエ氏は打って変わって史上最高齢の首相だ。

バルニエ氏は1978年、当時史上最年少の27歳で国民議会議員となった。外相、農水相、欧州連合(EU)のブレグジット担当主席交渉官を務め、ブレグジットをめぐるイギリスとの交渉では、ジョンソン元首相を相手にEUを守り、筋を曲げることはなかったタフネゴシエーターとして知られる。

欧州議会議員も務め、欧州委員会委員長選に挑戦したこともあり、「フランス政治を欧州全体に開放する」意欲を見せ、「愛国者とヨーロッパ人」というEU構想のシンクタンクも設立している。

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