最年少→最高齢に交代、仏首相「想定外」人事の背景 73歳のタフネゴシエーター、バルニエ氏の素顔

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フランス南東部グルノーブルに近い山間部で育ったバルニエ氏は、無口だが、忍耐力が強く、冷静沈着なことで知られる。交渉術に長けていることから、困難が予想される政党間対話にも期待が寄せられている。

バルニエ氏の相手は議会を構成する各政党、各会派となるわけだが、左派も巻き込んだ議論を積極的に行うことを宣言している。マクロン氏にとっては救世主となる可能性もあるが、まったく先は見えていない。

首相の存在は政治的安定に欠かせないが、マクロン氏自身は社会党出身であり、中道左派に近いが、大統領就任以来、首相は右派から選ぶことが多かった。

フランスで勢力を伸ばす極右勢力を考慮

フランスでは1997年の右派のシラク大統領と左派のジョスパン首相のコアビタシオン(保革共存)時代に治安が近年で最も悪化し、2002年の大統領選で争点化した治安問題で、移民に厳しい極右・国民戦線(現国民連合)のジャン=マリ・ルペン氏が決選投票まで勝ち進んだ過去がある。

その後の大統領選挙のたびに極右勢力が確実に伸長しているのも、移民問題、治安問題で有権者の期待感が高まったからにほかならない。今年7月の下院選で、仮にRN潰しで右派、左派が共闘しなければ、RNは単独過半数の議席を獲得できるあと一歩に迫っていた。社会の秩序崩壊が進み、有権者には不安定化が止まらない実情に対する危機感は強まっている。

取材をすると、「今のフランスはフランスとはいえない」「リベラル化が行きすぎ、カトリック的価値観はどこにも見られず、秩序は極端に失われている」との声が聞かれる。だからこそ、RNへの期待感も高まっている。

今回のバルニエ氏の選出は、RNを考慮に入れた結果なのは明白だ。ルペン氏も「バルニエ政権を直ちに打倒することで制度的混乱や妨害に加担するつもりはない」と明言し、RNのバルデラ党首もバルニエ新政権を「党として検閲するつもりはない」と述べた。バルニエ氏は、すべての人の声を聞くと宣言している。

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