築75年"困った"実家を「50万円」で売却するまで 小説家が直面「負動産」相続問題と実家じまい

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父の実家は兵庫県西部にあり、駅から徒歩20分の距離にある一軒家。私は都会の感覚が染みついているので『駅から徒歩20分の物件を売るのは難しいのではないか』と思ったのですが、なんとか買い手が見つかりました。

冷静に考えると駅から歩けない距離ではないですし、近所には病院があるから静かな暮らしを送るにはちょうどいいのかもしれないですね 」

買い手は、祖父の家を取り壊して新しく家を建てることを希望する若い夫婦でした。

前面道路が「私有地」で再建築不可物件?

しかし高殿さんがホッと胸を撫でおろしたのもつかの間、司法書士が取り寄せた登記簿謄本(過去の土地の持ち主などが記載されている書類)で売却の話は白紙に戻ります。

「登記簿謄本で、祖父の家の前面道路が隣に住む親族の私有地だとわかったんです。接道義務(※)を果たしていない土地は再建築不可。買い手は、購入を諦めました」

※建築基準法第42条で定義される道路(原則として幅員4メートル以上のものをいう)に対し、土地が間口2メートル以上で接していなければ建築物は建てられない

一見すると、祖父の家の前面道路は一般の人も通行できる普通の道路に見えます。しかし登記簿謄本によると、隣人の私有地。ある時、市が道路の拡張工事をするために、隣人の道路側の私有地(歩道)と、祖父の家の前面道路の土地を交換していたことがわかったのです。

私有地となった祖父の家の前面道路は、住民が困らないよう私道通行権の許可が提出されていたため、一見、何も問題ないように見えていたのでした。

「こういうケースは意外とあるらしいですね。登記簿謄本を確認すると、住民の知らない条件が出てくるんです。例えば、昔お地蔵さんの管理をしていた方は、自宅のほかに2件隣のお地蔵さんの土地も所有していたケースがありました。売却予定の家がある方は、法務局で登記簿の確認をしておくといいでしょうね」

再建築不可物件とわかったとたん、売却の話は暗礁に乗り上げます。

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