「アメリカ経済」がなんだかんだ好調な根本理由 知られざる「バイデノミクス」の中身と成果

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ただ、バイデン政権下での好景気は高インフレと相まっている。インフレ率は、トランプ政権の4年間では15.4%だったのに対し、バイデン政権の最初の3年間では19.4%になった。

このこともあって、アメリカ人はトランプ政権下のほうが、経済がいいと感じていた。ミシガン大学消費者信頼感指数は、パンデミック前のトランプ政権下では72から101、バイデン政権下では50から88で推移したことが報告されている。

今年7月のアメリカの雇用統計は予想よりも弱く、失業率が4.1%から4.3%に押し上げられ、アメリカ、日本、その他の主要国の株式市場が下落する原因となった。しかし、市場は回復し、現在、連邦準備制度理事会(FRB)は経済活動を維持するために9月中旬に金利を引き下げると予想されている。

インフレはバイデンの責任ではない

私は、ロングとバートンの比較結果は、実際にはバイデンとトランプの経済運営における成果の差異を過小評価していると指摘したい。先進国に蔓延したパンデミック後のインフレをバイデンの責任にするべき理由はほとんどなく、前述のように、アメリカはこの課題をたいていの貿易相手国よりもうまく克服している。

加えて、バイデン政権が長期的に成長と経済的平等を強化する政策に軸足を移しているのに対し、トランプ政権は富裕層や権力者を優遇する減税による短期的な景気刺激策に注力。アメリカでは政治が極端に二極化しているにもかかわらず、バイデン政権は、インフラ投資や製造能力強化、グリーン移行推進のための主要法案を可決することに成功している。

また、バイデン政権は、オバマ政権やトランプ政権とは一線を画し、賢明にも「マーケットクラフト」に取り組んできた。

これは、独占禁止法や労働規制などの市場ルールの改革を意味するが、この目的は競争やイノベーションの促進、そして、経済と政治の力関係のバランス化である。その点で、バイデン政権は1980年代以降、アメリカの経済政策を支配してきた新自由主義のパラダイムを、貿易保護に専念してきたトランプ政権よりもはるかに生産的な方法で打破した。

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