アメリカに過剰依存・過剰同調する日本への警告 インドは日本の戦中戦後をじっと見つめている

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――国際社会の中でインドの存在感が高まっています。グローバルサウスの旗手として第三極を形成しているように見えます。

インドが第三極を形成しているという見方は皮相的だ。植民地時代の苦難の経験から、インドは大国主導の世界秩序に対する反発をDNAとして潜在的に持つ。独立後のインドは、中立主義を保ち、どこの国とも同盟を結ばない「非同盟」を掲げた。

近年のインドは、あらゆる国・機関と関係性を深める「全方位外交」の策を採っている。中国を牽制するクアッド(日米豪印4か国協議)の一翼を占めながら、「反西側」の色合いが強い中国主導の上海協力機構にも加わる。

この7月にはロシアを訪問してプーチン大統領と会談したばかりだが、8月23日にはウクライナのゼレンスキー大統領を訪ね、平和実現のために自分が役割を果たす用意があると伝えたという。仲介外交に乗り出そうと、存在感を強めている。

戦略的自律性を守るために、どこの国とも一体化しないことで自国の利益を追求している。米国と一体化し、中国包囲網の先頭に立たされてしまっている日本とは対照的だ。

――日本の進むべき道はどこにあるでしょうか。

グローバルサウスの存在がますます大きくなり、世界は「全員参加型」の秩序へと変わってきている。「米中対立」や「民主主義陣営vs.権威主義陣営」といった単純な二極構造の世界観に引きずりこまれつつある状況にまずは気がつき、そこから脱却しなければならない。アメリカへの過剰同調と過剰依存だけで世界と渡り合える時代ではない。

そのうえで、アジアで信頼される、たしかな技術力を持った民主主義国家としての立ち位置を踏み固めるべきだ。日本は宿命的に米中の狭間に立つ。その日本こそがグローバルサウスの本音を理解し、しかもアメリカをアジアから孤立させず、中国を国際社会の健全な参加者にしていく役割を担うべきである。非核平和主義を貫く日本が、核兵器を保有するインドに厳しくその責任を問うことも必要だ。

こうした視点を抜きにして、インドとはビジネスだけで関わろう、ひと儲けしようなどと考えていたら日本人は冷笑される。大国主義の呪縛を超えた構想や行動が日本には求められている。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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