住友化学"問題案件"スピード決着でも残った宿題 サウジ石化合弁に大ナタ、ファーマも復調だが

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会計処理は少しややこしい。

債権放棄の損失は金融費用として計上される。住友化学が採用するIFRS(国際会計基準)では金融費用は営業利益には反映されない。他方、持ち分法投資利益は営業利益に反映される。ちなみに会社が参考値として示す「コア営業利益」に、通常はラービグの持ち分法損益は反映されるが、今回の債務免除に伴う利益は非経常扱いで反映されない。金融費用もコア営業利益には含まれない。

住友化学が5月に発表した2025年3月期の業績予想は、コア営業利益が1000億円、営業利益が700億円、純利益が200億円。今回の損失も費用も基本は織り込んでおらず、会社は期初予想をまだ変更していない。

仮にコア営業利益は同じ1000億円、その他もすべて想定通りだった場合、営業利益は1820億円、純利益はゼロ近辺となる(税金の扱いが不明のため70億円の赤字となるかは不明)。実際には、事業自体は想定を上回っている。予定していた事業売却が進むかといった不透明要因はあるものの、上記試算を上回ってくる可能性は高い。

現時点ではベストの選択

住友化学としては、今期業績にはマイナス影響が出るとはいえ、来期以降はラービグの業績影響を低下させられる(もちろんラービグが利益を出した場合の取り込みも少なくなってしまう)。一定の止血ができたことはプラスに評価すべきだろう。

ラービグの2009年から2023年までの累計損失(税前)は約15億ドル、住友化学としては約5.6億ドルの損失となる。それでも岩田圭一社長は「グローバルなケミカルカンパニーへの飛躍に役立った」と評価した(記者撮影)

ラービグの2024年1~6月の最終赤字は24.6億リヤル(約950億円)、前年同期より14%(現地通貨ベース)拡大しており、早急な再建案の策定は必須だった。新たな資金支出はしない方針を守ったうえで、再建案をまとめ上げた。

「現時点では取りうるベストの選択だったのでは」という岩田社長の発言は額面通り受け取っていい。

とはいえ、株式売却代金はラービグに再拠出する。どういう名目での拠出になるかはまだ決まっていないが、優先株といったメザニン(ラービグから見て負債と資本の中間)になるのではないか。

いずれにしろ、住友化学として株売却分をキャッシュで回収できたわけではない。ラービグに対するエクスポージャー(投資、融資、保証などリスク資産の合計)はなお3800億円程度残る見込み。その保全や今後の15%分の業績反映を考えても、住友化学としてラービグの収益強化は今後も課題であり続ける。

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