シドニーで近隣住宅の共同売却が増加 売却した土地はアパート建設用地に

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 8月24日、オーストラリアのシドニーでは住宅の供給不足と価格高騰を背景に、郊外の住宅所有者が隣人らと組んで物件をアパートの開発地として売りに出す動きが増えている。写真はシドニー郊外のアパート。6月撮影(2015年 ロイター/JASON REED)

[シドニー 24日 ロイター] - オーストラリアの最大都市シドニーでは、住宅の供給不足と価格高騰を背景に、郊外の住宅所有者が隣人らと組んで、物件をアパートの開発地として売りに出す動きが増えている。

シドニー郊外キャッスル・ヒルに寝室が5部屋もある広い家を持つロン・バクストンさん(73)もその1人。「不動産屋や開発業者から物件の売却を手伝いたいとの電話が入り始めていたが、自分たちで協力してやることにした。その方が個別に売却するよりも確実にいい値段がつく」と語る。バクストンさんは1979年に8万7000豪ドルでこの家を購入した。

不動産屋によると、開発業者からのアプローチを待たずに自分たちで率先して行動する動きは住宅所有者の間でこの1年間に急増しているという。

シドニーでは人口約450万人が、ニューヨーク市のほぼ倍となる1600平方キロメートルの圏内で暮らしている。今後20年間に年10万人の人口増が見込まれるなか、開発業者らは住宅の密集度を高めることが十分な供給を確保するカギとみている。

不動産大手ストックランド<SGP.AX>の最高経営責任者(CEO)は「住宅の購入しやすさに課題が生じており、これに対処する唯一の方法は供給(の拡大)だ」と指摘。集合住宅は今後増えるとの見方を示した。

5倍の値

開発業者はアパート1棟の建設に4000平方メートル以上の土地が必要。このため、隣人と協力して広い土地を提供できる住宅所有者らは高いプレミアムを要求することが可能だ。

キャッスル・ヒルの不動産仲介業者レイ・ホワイトのケイロン・ステッドマン氏は「1つの開発区画としてまとめて売りに出せば、一般的に高い値がつく。物件価値の2倍や3倍、時には5倍もの値がつく場合もある」と語った。

昨年12月に同じ郊外で売りに出された5軒の家(ほとんどが古いれんが造りの一軒家)は売却額が総額2050万豪ドル(1500万米ドル)と過去最高を記録。それぞれ約400万豪ドルと個別の売却で期待できる額の約4倍となった。

住宅価格が記録的な水準となるなか、規制当局はバブルの可能性を懸念している。

BISシュラプネルのアソシエートディレクター、キム・ホートリー氏は「シドニーでは今後数年間は供給過剰になることなく建設を続けられるだろう」と指摘。その上で「開発業者はこの戦略を深追いして過度に高い値段を支払い窮地に追い込まれることのないよう気を付けるべきだ」と警告した。

 

(Swati Pandey記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子)

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