現状の鉄道周遊券は、訪日観光客に甘すぎる 「安すぎ」「予約し放題」から生じる弊害とは?

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インバウンド客が増えて日本でおカネを出費するという行為は、「モノの輸出」と同じ効果がある。つまり、観光立国を目指す日本としてはとてもありがたいことだ。しかし、先に筆者が「プロから見て、新幹線には大きな欠点がある」でも述べたように、JRパスを持って旅行する訪日客の増加で、主要駅では「みどりの窓口」の混雑が著しくなっている。

一般客からの苦情を受け、関西空港駅には訪日外国人の向けの商品を専門で扱う窓口が設置されたほか、東京駅や成田空港駅などでも同様の対応を行っている。

JRパス保持者への指定券発行は「枚数の上限規定は無い」ため、パス有効期間内の列車であれば、重複する時間帯の複数列車の指定券を同時に申し込んだりしない限り、基本的にはいくらでも指定券を発券してくれる。みどりの窓口で並んで様子を見ていると、JRパス所持者が日程を書いた紙を係員に見せて、長時間かけて一度に5区間とか10区間分の指定券を取っているという姿をよく見かける。

指定券を取るだけ取って、乗らずに放置

パスだけで乗れる「サンライズ」の「ノビノビ座席」

JRパス所持者への対応は、どんなに時間を掛けたところでJRにとって追加の収入にはなるわけではない。それどころか、これによる収入減のリスクさえある。訪日客による「指定券の取り放題」は、結果として座席の無駄遣いにつながるため、本来であれば得られる指定券販売収入を減殺してしまっているのだ。

現在の規定では、JRパス保持者が指定を取った列車に乗らなくても金銭的な罰則はない。そのうえ、パスのどこにも「不要な指定券は返却してほしい」といった明示がない。したがって、パス保持者には、次のような行動を取るインセンティブが働く。混雑している窓口に並ぶ以上は「可能性の低いものも含めて、取れるだけ指定券を取る」。そして使用しない指定券については「乗らずに放置する」。

筆者はこの「取りっぱなし」について実態を知りたく、何人かのJRパス利用者にヒアリングをしたが、「7日間で予約した指定券のうち3〜4枚は使わなかった」というのが平均的な答えだった。

しかし、JRには指定席券について、「乗り遅れた場合でも予約列車の乗車日と同じ日なら、後続列車の自由席に乗ることができる」という規定がある。そのため指定席をキャンセルし損なった席が空いたまま、ということは珍しくない。とはいえ、それほど多いわけではない。

JRパス所持者による「指定の取りっぱなしによる空席」についても、JR全体から見たら割合的には大した数ではないと予想され、今のところ新たな策を講じる必要はないとみなされているのだろう。

しかし、問題が発生している路線もある。

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