東芝、室町社長「続投」の新体制に付く疑問符 前期は赤字転落、見えない信頼回復
今後の焦点は事業の立て直しである。
まだ正式発表が行われていない、前2015年3月期の業績は、売上高が6兆6600億円、営業利益が1700億円、最終損益が赤字に転落する見込みだ。
前期の場合、原子力発電事業や半導体事業の減損の1270億円のほか、事業撤退費用や訴訟関連費用の480億円と、計1750億円もの損失を計上。全体の営業利益1700億円のうち、事業別では、半導体などの電子デバイス事業は2140億円を稼ぐが、PCやTV、白モノ家電などのライフスタイル事業は1100億円の赤字に沈むという、偏った収益構造が露わになった。
さらには、2009年3月期から2014年4月~12月期の業績でも、減額修正の幅が拡大する。第三者委と自主チェックを併せた、公表済みの1562億円に加え、PCやTVにおける減損など568億円を追加し、計2130億円の減額修正が決まった。
不採算事業の見直しをできるか
当面の課題はPCやTV、白モノ家電をはじめ、不採算事業の撤退を含む見直しを、早急に断行することだ。これまでもPCは法人向けに注力し、TVは北米などでブランド供与型のビジネスモデルに切り替えるなど、構造改革を行ってきたが、コモディティ化した製品は差別化が難しく、苦戦していた。白モノ家電は一部製品を除き、約9割を海外で生産しているものの、想定を上回る円安進行が裏目に出て、輸入採算が悪化している。
格付け会社であるスタンダード・アンド・プアーズ・レーティング・ジャパン(S&P)の柴田宏樹・主席アナリストは、「これまでの構造改革で、(赤字の)ライフスタイル事業の処理はある程度済んだと考えていたが、今後も厳しい見方をしなければならない」と指摘する。
東芝の渡邊幸一財務部長は「ネガティブなのはライフスタイル事業だ。構造改革を進めているが、進捗状況をみたとき、改善度合いが不十分かもしれない」と、厳しい現状を自ら認める。
「可及的すみやかにガバナンス、内部統制、構造改革を行い、その結果をご覧いただきたい」と、続投を選んだ室町社長の言葉にも力がこもる。しかし、投資家や顧客、同業者の信頼を失った東芝の道のりは、決して平坦ではない。
(撮影:尾形文繁)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら