創業者の越智直正氏は日本経済新聞とのインタビューの中で、「最近、デフレ経済とかいわれ、モノの値段がどんどん下がっています。価格破壊ではなく商品破壊です。日本の靴下製造技術は世界最高だといわれていたのに、海外の低価格で品質のよくない靴下に追いやられています。なんとしてでも品質を落とさずにコストを下げる努力をもっとしていかなくてはなりません」と話している。
ここに来て、「Made in Japan」の付加価値が上がっていることには、一体どんな背景や意味があるのだろう。冒頭でも記したが、ラルフローレンやアバクロがどこの国で生産をしているか、確かめて購入している人はほとんどいないだろう。中国やインドネシアなど発展途上のアジアの消費者だけが、センシティブであるとも考えづらい。
では日本という国の総体としてのイメージ。いわゆる「クール・ジャパン」的なものが影響しているのだろうか。これは有力な仮説に思える。トヨタやSONY、ユニクロなど大企業が蓄積してきた「良質なものづくり」のイメージの蓄積、そしてポップカルチャーが育んできた「クリエイティブ」でエッジの立ったソフトパワー。参考資料ではあるが、BBCが毎年行なっている国別好感度調査で、日本はカナダ、ドイツ、イギリスについで、4位にランクしている。
経済学者のタイラー・コーエンが著書『創造的破壊』で記しているように、グローバル化は、良質なものをより安く買える選択肢と、浮いたお金で少し高いがプレミアム感の高い消費をする選択肢を同時に提供する。バリューチェーンをグローバルに最適化した多国籍企業が市場を切り開き、そこにニッチ市場も誕生、多様性に富んだ市場が次々と生まれていくというわけだ。これは発展途上国でも顕著になってきているのだろう。
sgの例で見たように、フェイスブックをはじめとした、新しいメディアの台頭で、今や巨額の宣伝費や時間を費やした現地調査をしなくとも、海外進出への道が拓けるようになっている。「日本」というプレミアム感を生かしたベンチャーの躍進が、これからも続くかもしれない。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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