出光と昭和シェル、「対等統合」へのハードル 2強入りはするが、すんなりいくのか

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縮小
握手を交わす昭シェルの亀岡社長(左)と出光の月岡社長

今回、ロイヤル・ダッチ・シェルが日本での精製販売事業から資本を引き揚げるのは、天然ガスを中心とした上流へ経営資源をシフトしていることもあるが、最大の理由はこの市場縮小といえる。

直近では米エクソンモービルも、2012年に東燃ゼネラル石油に対する出資の大半を引き揚げている。今回の昭和シェル株売却で、海外の石油メジャーは事実上、日本からすべて撤退したことになる。

コスト削減余地は少ない?

ただ、「国内に基盤を作り、世界に乗り出す」(亀岡CEO)ためには、課題も残る。出光は今回の株式取得に必要な約1691億円を、全額借り入れで賄うとしており、ネットD/Eレシオ(純有利子負債÷純資産)は、現在の1.5倍から1.8倍に悪化する。さらに経営統合に向けて、TOB(株式公開買い付け)か株式交換で、残る株式を取得する必要がある。

出光の場合、2017年の操業開始を目指すベトナムのニソン製油所の建設や、カナダでのLNG(液化天然ガス)プロジェクトなど、海外への巨額投資を行っている最中だ。財務体質改善を進めるには、統合によるシナジーを確実に生み出さなければならない。

しかし「コストの合理化には不透明感が残る」(石油業界担当の証券アナリスト)という声も聞こえてくる。2010年春に新日本石油と新日鉱グループが統合して誕生したJXは、SS(ガソリンスタンド)の「JOMO」ブランドを廃止し、「ENEOS」に一本化。14年3月に室蘭製油所を閉鎖するなどして、3年かけてようやく1000億円超のコスト削減を達成した。

一方の出光と昭和シェルは、製油所の密集する大阪・堺や千葉などで生産拠点の重なりが少なく、「製油所の閉鎖をする必要がない」(出光の月岡隆社長)。逆にいうなら、大幅な合理化の余地は乏しい。

また、両社は統合後も当面の間、「出光」「Shell」という、SSの両ブランドを維持する方針だ。商圏が重複する販売店の集約や、本部コストの削減にも時間がかかるだろう。コスト削減手段は、石油製品を貯蔵する油槽所の統廃合や、物流費の縮小などに限られてくる。

出光は創業から、一度も海外資本が入らなかった、民族系の石油会社。外資系だった昭和シェルとは企業風土が大きく異なる。統合の効果を最大限発揮するのは、そうたやすくなさそうだ。

「週刊東洋経済」2015年8月22日号<17日発売>「核心リポート03」を転載)

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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