ビットコインには、今も大きな潜在力がある 「所有権がない」判決に惑わされるな

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今回の判決について、ビットコインの販売所を運営するbitFlyer(ビットフライヤー)代表取締役の加納裕三氏は、「『所有権がない』という言葉のイメージだけがひとり歩きしてしまっている印象だ。取引先やユーザーから、誤解に基づくネガティブな反応が非常に多い。われわれだけで事実の説明に追われているのが現状」と戸惑いを見せる。

確かに、マウントゴックス社の破産、経営者の私電磁的記録不正作出・同供用容疑での逮捕などが大きく報道され、ビットコインに対する悪印象が強調されてしまっている雰囲気があることは否めない。

しかし、ビットコインの「ブロックチェーン」システムは、国家が管理することもなく、低コストで整然と登記台帳のような仕組みが作られていくという画期的なもので、決済という取引の根本に対して革命を起こす可能性を秘めている。いまシリコンバレーを中心に話題になっている「Fin Tech」の代表格といえるものだ。

ビジネスとしての可能性は非常に大きい

実際、大手金融機関などを中心に、積極的にビットコイン事業への投資がされており、bitFlyer社も、8月12日に三菱UFJキャピタルなど数社から、総額5億1000万円の資金調達を行った。

藤武弁護士は法律の課題について、次のように説明する。「ビットコインの本当の価値は、革新的な技術によって、ビジネスの最前線にいる人々を触発したことにある。近い将来、ビットコインが持つ『ブロックチェーン』の技術を応用したビジネスは数多く出てくることが予想される。法律はつねにビジネスの後追いになり、法律家も現実のビジネスに疎くなりがちだが、意識的にこのような動きを追っていかなければならない」。

今回、思わぬことから裁判所がビットコインの性質論争に巻き込まれることになったが、「ビットコインに所有権は認められない」とした今回の判決は、ビットコインが財産として無価値であるとか、法的に一切保護されないと判断したものではないことは確かだ。

日本のように、クレジットカードなどによる決済システムが高度に発達した国では、ビットコインを使うインセンティブが乏しく、今のところは投機の対象となっているに過ぎないと指摘する声もあるが、将来的にどのような形で発展していくかは、まだ想像がつかない部分もある。今後議論が進むであろう、具体的な法規制の内容を注視しつつ、ビットコインが持つ可能性については、冷静に考えたいところだ。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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