とんがっているほうがむしろいいとの風潮--『ザ・ラストバンカー』を書いた西川善文氏(三井住友銀行名誉顧問、前日本郵政社長)に聞く

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──次いで、平和相互・イトマン問題です。

住友銀行は本店が大阪にあり発祥も関西。東京には支店が少なかった。頭取・会長を務めた磯田(一郎)さんは東京の財界人になりたい。大阪の銀行では、経団連トップになれないと考えたようだ。

東京を強くするのは銀行としていいことだが、平和相互を買収とは、えらいことをするなと思った。当時、私は(丸ノ内)支店に出ていて、その後企画部長として関係する。安宅がようやく終わったところで、今度は平和相互の問題債権の処理に当たった。当時の融資第三部長はイエス・ノーのはっきりしない人で、はっきりしている私とはいいコンビだった。

──イトマンも、持ち味を生かす処理スキームになりました。

窮余の一策ながら住金物産との合併で収めた。困ったのは、イトマンは上場会社だが、住金物産は非上場。吸収されるイトマンを存続会社にはできない。野村証券の田淵(節也)さんに話を持ち込み、アイデアを練ってもらった。そこで提案されたのが、まずイトマンを特設ポストに入れて住金物産を吸収合併し、存続会社はイトマンとする案。ただ合併と同時に社名変更して住金物産にするウルトラCだ。イトマンの繊維部隊、食料部隊のいい人が残ってくれたのはよかった。

──磯田会長の退任では「鈴を付けた」ようですね。

磯田さんは、不祥事の責任を取って会長を退任すると急きょ日曜日に記者会見を行った。ところが、なかなか辞めない。部下に本店の全部長に電話をかけさせて、土曜日に秘密部長会を信濃町の住友銀行会館で開き、そこで要望書をしたためた。

磯田さんはあの頃おかしくなっていた。私自身、電話で巽(外夫)頭取に、何とかしてくださいと怒鳴るような言い方をしてしまった。それを聞いていた家内から、頭取に何ということを言うの、とえらくたしなめられたことを覚えている。

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