新型イースで見せたダイハツの「原点回帰」、軽でハイブリッドに対抗

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昔の主査制度に戻る 権限集中し一点突破

福塚氏は1枚の紙をいつも持ち歩いている。「主査10ヶ条」。トヨタ「カローラ」の初代主査、故・長谷川龍雄氏が残した言葉だ。当時の開発責任者は主査と呼ばれ、社長の代行のように全権限を掌握していた。しかし組織が大きくなり、部門別に細分化されると、主査は「まとめ役」となり、その名称もチーフエンジニア=筆頭技術者に変わった。バーチャルカンパニーそのものが“車作り”の原点回帰ともいえる。

「昔の主査制度が自分のイメージにあった」。そう語る福塚氏は発売直前、親会社のトヨタ本社に豊田章一郎名誉会長と豊田章男社長を訪ね、イースがなぜ開発できたのかを説明した。章一郎名誉会長は「大組織のトヨタではできないことをやってくれた」と、熱心に聞き入った。

バーチャルカンパニーはまだ解散していない。実はイースと並行して、もう一つ別のプロジェクトを進めている。イース発売で一部のメンバーは「卒業」したが、一部は残り、次のミッションに取り組む。

ただ福塚氏は「バーチャルカンパニーの限界もあった」と打ち明ける。会社全体に「イースはバーチャルカンパニーがやっていること」という意識が芽生え、生産部門などに当事者意識を植え付けるのに労力を要した。「次のターゲットには新しいやり方で挑戦する」(福塚氏)。掲げるゴールによって最適な組織は変わってくる。

9月末トヨタが軽販売に参入し、先週はホンダが新しい軽を発表するなど、軽市場は競争激化が予想される。その中で、ダイハツは原点回帰に活路を見いだした。同社はイースの技術を他の車種にも応用する計画だ。イースが軽のあり方に一石を投じたことは間違いない。

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(並木厚憲 撮影:ヒダキトモコ =週刊東洋経済2011年11月5日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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