女子アナが「男性の体臭批判でクビ」の皮肉な現実 「わざわざ言う必要があるのかには慎重に」

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そうした背景から、このX投稿を見たとき、まず筆者は「少し言い回しにトゲはあるけど、こういう意見もあるよな」と感じた。しかし、主語を「男性」と大きくしたことには、懸念を覚えた。「この2文字があることで、大炎上してしまうだろう」と感じたのだ。

男性に対する冷やかしは、これまで「イジり」の一環として見なされがちだったが、ここ数年で一気に反応が厳しくなった。つい先日も、しまむら系列のベビー用品店「バースデイ」が、「パパは全然面倒みてくれない」などと前面に書かれた衣料品を販売して炎上し、販売中止に追い込まれた。

関連記事:しまむら「パパ貶す服で大炎上」への強烈な違和感 「パパなら皮肉ってもいい」風潮は未だに存在?

これまで「男性なら下げてもいい」といった風潮があったこと自体に、個人的には違和感を覚えるのだが、いずれにせよ急激に、社会的なセンサーは敏感になっている。その背景には、これまで「女性蔑視」ばかりが問題視され、「男性蔑視」が軽視されていたと感じる人々の潜在的違和感が、多少なりともあるだろう。

そこへ来て、川口さんの場合は、以前よりXでジェンダーギャップについて、たびたび触れていた。とくに2022年8月23日の「北海道は政治、経済、教育においてジェンダーギャップ指数が全国最下位とのこと。。北海道の女性は逞しく強いと思ってたけど実際のリーダーは男性ばかり」といった投稿が注目されている。ジェンダー問題に興味を持ちつつ、今回の投稿をしたことにより、「合わせ技」で炎が燃えさかった。

契約解除は、会社としては仕方がない?

SNS上では、所属事務所の対応について、「契約解除はやり過ぎではないか」との指摘が見られる。筆者も当初はそう感じていたが、芸能事務所がブランディング商売であることや、ビジネス研修でマナーを教える立場だと考えると、妥当な判断だと感じる。

実際にVOICEの契約解消報告では、「言葉は誰かを傷つけるためにあるものではなく、勇気づけたり愛を語るためにあるものと考えており、言葉を扱う仕事に携わる者としてはあってはならず、大変心苦しく考えております」と語られていた。

こうした企業理念は、経営上の柱となる。事務所の考え方と異なる発言を放置していたとなれば、会社もしくは他の所属タレントにも、火の粉が降りかかる恐れがある。同社にとって「言葉」は最大の商売道具だ。そこでの不祥事となれば、「一発アウト」もやむなしだと感じてしまう。

今回の事案は、アナウンサーに対する「世間の認識」を再確認する出来事だった。筆者は常日頃から、アナウンサーが個性を出すことに違和感を持つ視聴者が、一定数いると感じていた。そこには「淡々と時代を伝えること」が、その使命だとの考え方がある。

とくに放送局に所属する、いわゆる「局アナ」は、パッケージングされた自社番組以外で、「自分の色」を出すことと相性が悪い。この間も、体調不良で休養中の局アナが、パリ五輪を観戦してバッシングを浴びた。

インスタグラムの投稿で「会社に報告している」と書き添えていたにもかかわらず、炎上してしまった理由には、やはり「アナウンサーは淡々と原稿を読め」といった先入観があるのではないか。

こういった視線は、アナウンサーのみならず、私も含めたメディア業界全体に対して向けられている。新聞記者のSNSが失言で炎上するのも、基本的には似たような構図だ。世間はファクト(事実)を伝えてほしいのに、一部の記者はそこに個人のエモーション(感情)を混ぜ込んで発信したくなる。

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