マツダ、「ロードスター」が乗り越えた苦難 4代目は発売から2カ月で年間計画を"突破"

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一方、ロードスターが雌伏の時を過ごす中、2012年に新世代商品群の第1弾として投入された「CX-5」がヒットし、2013年3月期は5期ぶりの黒字転換を果たす。以降発売された新型の「アテンザ」、「アクセラ」なども販売拡大に貢献し、”真打ち”への期待はいっそう高まった。

開発の着手から2014年末までの7年間、役員の承認を求める会議は45回にも及び、作り直しを何度も命じられた。ロードスターにとって幸運だったのは、発売の延期によって、新世代エンジンに代表されるさまざまな最新の技術を盛り込めたことだった。課題だった車重も、ボディーやシャシーの部品を中心にアルミ材を使用し、3代目から100キログラムを超す軽量化(4代目のベースグレードは990キログラム)に成功した。

販売店と開発者の距離を縮める

東京・大田区にある関東マツダの販売店。ロードスターが展示車両の最前列に陣取る。

前述した関東マツダでは、営業社員をマツダ本社に研修に行かせ、開発者から直接聞いた話を、顧客との会話に活かす取り組みに力を入れている。「顧客の多くはインターネットや雑誌で商品知識を入手して来店するが、開発者から聞いたエピソードを紹介すると反応が違ってくる」(垣本店長)と手応えを感じている。最近は欧州車のユーザーがマツダ車に乗り換えたり、2台目として購入したりするケースも増えているという。

かつてのマツダは販売数量を上げることが最優先だったが、商品性とブランド価値の向上に方針転換をして、経営危機からの復活を成し遂げた。小飼社長は今年5月、ロードスターの発表会で、「選ばれ続けるオンリーワンブランドになることを目指す」と強調した。”小さな巨人”の世界展開は、マツダブランドの行く末を左右するといっても過言ではない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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