立ち食いそばに「100万円の机」実現させた発想法 「ルールよりゴール」で新しい発想が生まれる

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目からウロコだった。蕎麦屋に100万のテーブルは高いが、100万以上の価値になる芸術作品なら、むしろ安い買い物だ。彼は、滋賀在住の作家に依頼して、大きな石柱のような彫刻作品を納品した。その存在感のある彫刻により彼の目論見通りに素晴らしい店になったし、テーブルではなく傾いた芸術の上で汁をこぼしながら蕎麦をすする風景がSNSでも話題になった。

もし彼が「高価すぎるのはダメ」というルールに従って安価なテーブルをつくっていたら、この反響は生まれなかっただろう。彼は、ある山を登ろうとしていろんな登山口を探したり、山の中腹で「仕方ない」と諦めたりするのではなく、高い山から見える素晴らしい景色を見るために、登る山を変えたわけだ。ルールを変えてゴールを目指すこのアプローチは、すべてのビジネスに応用できる思考ツールだ。

「白い紙に白いペンで、私に見えるようにはっきり文字を書いてください」

皆さんならこの問題をどう解くだろう? これは僕が小学生向けにアイデアの発想講座をする時に必ず出す質問で、子どもたちからは「筆圧を強くする」とか「あぶり出し」などのアイデアが出てくる。

何をゴールと思うかによって、スタート地点が変わる

では僕が出す答えは何かというと、「まず、黒いペンをくださいと言う」だ。みんなから「えーそんなのずるい」という声が上がる。でも本当にそうだろうか?「白い紙に白いペンで書く」というルールに囚われれば、黒いペンをくれなど論外だし、ずるいことになる。しかし「私に見えるようにはっきり文字を書いてください」を最も大切な部分ととらえれば、黒いペンをくれというのも正しい答えの一つになる。

つまり、何を大切なゴールと思うかによって、発想のスタート地点が変わるわけだ。

YUSUKE SEKIの例でいえば、お店にふさわしいテーブルを置くというゴールを達成するために、100万円はかけられないというルール内でなんとかしようとするのではなく、繁盛するお店をつくるというゴールを見据え、100万円以上の価値がある芸術作品を置くという、いわば「ずるい」アイデアで勝負したわけだ。

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