超快速で北陸新幹線に挑むあの路線の真意 なぜそこまでスピードにこだわるのか

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北越急行では現在その原因を調査中とするが、ダイヤを見るとある程度推測が可能だ。まず、直江津発車時刻が6時ちょうどから5時52分に繰り上がったこと。たった8分の違いとはいえ、「6時台発」と「5時台発」では印象が大きく異なる。加えて、北陸新幹線が平日朝に上越妙高発長野行き「はくたか596号」を設定し、直江津を6時01分に出れば、上越妙高と長野で乗り換えて、ほくほく線経由よりも早い8時32分に東京駅に着けるようになった。乗り換えが増え、運賃も割高になるが、朝の利便性は1分が左右する。目新しさもあり、北陸新幹線に乗客が流れたのではないだろうか。

「お客様の利用動向をしっかり検証した上で対策を立てるが、場合によっては3821Mを超快速にすることもあるかもしれない」(大谷氏)

3821Mを超快速にすれば、直江津発を6時台に繰り下げることが可能になる。それによるプラスと、通過駅が増えることによるマイナスのどちらが大きいかを検証することになるだろう。ほくほく線は、北陸新幹線と1分1秒を競うライバルなのである。

鉄道本来の高速性を活かして生き残りへ

在来線特急「はくたか」廃止によって、“ピンチ”が伝えられがちなほくほく線だが、実は地方鉄道としては恵まれた環境にある。在来線としては最高クラスのインフラを備え、沿線人口は約20万人。「はくたか」を除く普通列車の利用者数は最近まで増加を続けており、2012年度には112万人を超えた。特に、通学定期利用者は2007年以降右肩上がりで、少子化時代にあって異例ともいえる伸びを続けていた。

これは、少子化によって新潟県の県立高校が全県一学区制となり、県内どこの高校も受験できるようになったことが大きい。ほくほく線は、六日町、十日町、上越という地形的に分断された3つの地域を高速に結んでおり、遠くから電車で通う生徒が増えたのである。ただし、2014年度はついに通学定期利用者が減少に転じた。これからが正念場だ。

北越急行でも、「今後は100%地域鉄道としてやっていく」(大谷氏)として、沿線との結びつきを強めている。4月1日には、北越急行が3億4000万円かけた十日町駅舎がリニューアルオープン。従来よりも約1000平方メートル増床し、2階には十日町市の総合観光案内所が新設された。

リニューアルした十日町駅の観光案内所。十日町市の観光交流課も入っており、町の観光拠点となった

「イベントも可能なスペースができたので、ここでフリーマーケットを開催するなど、町の人々にどんどん使ってもらい、観光拠点にしていきたい」(同)

超快速でそのスピードと便利さをアピールし、駅に人が集まる場を作って地域密着の取り組みも進める。北越急行ほくほく線は、鉄道本来の特性を活かし、地域に欠かせない公共交通として存在感を示そうとしている。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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