超快速で北陸新幹線に挑むあの路線の真意 なぜそこまでスピードにこだわるのか

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在来線最速の時速160キロメートル運転に対応した高架線。道路もよくなったが、自動車はほくほく線のスピードには敵わない

元々、ほくほく線は時速160キロメートル運転が可能な高規格で建設されており、鉄道の高速性を存分に発揮できる。普通列車も、もっとも速い列車は時速70キロメートル前後の表定速度をマークしており、六日町-十日町間が車で30分近くかかるのに対し、ほくほく線は快速列車で10分、各駅停車でも15分と優位に立っている。特急通過待ちもなくなり、六日町-犀潟間では全列車平均で8分の短縮を実現した。

「当社線の沿線人口は20万人ほどとそれなりの規模があり、以前から沿線の利用も多かった。超快速をはじめとする速達性の高い列車を1時間に1本程度運行することで、こうした需要をしっかりとカバーしていく」(大谷氏)

沿線有数の町である十日町は織物産業が盛んであり、首都圏方面はもちろん、金沢・京都方面へのビジネス需要が根強くある。首都圏、金沢とも所要時間は鉄道の方が自動車より1時間以上速く、北陸新幹線開業後もほくほく線が果たす役割は大きい。超快速は、こうしたほくほく線の利便性をアピールするために企画されたのである。

 現有列車をやりくりしてダイヤ設定

問題は車両だった。特急用車両はJRに売却することが決まっており、通常の車両は12両しかない。超快速のために車両を新造すれば、トータルで10億円くらいの投資が必要になり、非現実的だ。といって、車両数はそのままに、既存の普通列車をどんどん超快速に格上げすると、普通列車が減るため、主要駅以外の利便性が損なわれて「地域密着」から離れてしまう。

そこで、現有車両をやりくりして、まずは1往復を設定することになった。では、どのようなダイヤにするか。

首都圏へ向かう地元の人々の利便性を考えるなら、朝、直江津を出て、越後湯沢で東京行き新幹線に接続、夜に直江津へ戻ってくるダイヤが理想的だ。だが、朝の直江津発は、以前から6時ちょうど発の快速列車3821Mがあった。越後湯沢で上越新幹線に接続し、9時前に東京駅に着ける便利な列車で、上越市周辺のビジネスマンに人気だった。

インパクト重視のダイヤを設定

この列車を超快速に格上げしても、直江津発が10分程度繰り下げられるだけでダイヤの手直しにしかならない。一方、東京から直江津方面に来る列車は、従来は朝から「はくたか」に依存していた。こちらに超快速を設定すれば、「はくたか」に代わる目玉列車として大きなインパクトを与えられる。最初の超快速は、越後湯沢を朝出て、夕方に直江津から戻ってくるダイヤとなった。越後湯沢発は東京駅7時48分発の「MAXとき305号」に接続し、北陸新幹線を利用するよりも安くて早く、直江津に着けるようになった。

こうして3月14日から運行を開始した超快速「スノーラビット」は、ネーミングやダイヤの話題性もあって、まずまずの滑り出しとなった。一方で課題もある。従来人気だった直江津発の快速3821Mが、改正後は利用率が下がってしまったのだ。

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