効果ある?「片側空け」防ぐエスカレーターの性能 どんな仕組みなのか、日立が明かす開発秘話
では、どのような仕組みで片側空けを抑止するのか。日立ビルシステムの担当者によれば、既存の2つの機能と新たに開発した3つの機能の組み合わせだ。
エスカレーターに近づくと、エスカレーター手前の床に埋め込まれた誘導表示器が乗り込む方向をLEDの矢印で示す。これは以前からエスカレーターのオプション機能として提供されている。また、乗降口にあるエスカレーターとの境界部分にLEDを埋め込み、乗り降り位置を知らせる(コムシグナル)。これも既存機能である。
続いて新機能。エスカレーターの乗り込み口付近の水平状態の踏み面に、2列での立ち位置をLEDが照射し、2列立ちを誘導する。続いて、上りエスカレーターに乗り込んで水平状態から階段状になっていく位置で、ステップの蹴上げ部分にLEDを照射する。段差を強調することで、歩かずに立ち止まることを促す狙いがある。
さらに、エスカレーターの両脇のスカートガードにもLED照明を設置し、ステップの移動スピードに合わせて照明を光らせるようにすることで、歩かずに立ち止まって利用することを促すという。
今回の5つの機能はいずれもLEDを用いたものだ。日立が提示した複数案の中から大阪メトロが採択した。LEDの代わりにエスカレーターへのラッピングで2列立ちを促す案も出たが、万博の最寄り駅ということを考えると未来感があるLEDのほうがいいということになった。そういえば、夢洲駅に乗り入れる新型車両400系も宇宙船のようなデザインである。
新機能の効果はどれくらい?
LEDを活用した5つの機能でどのくらいの片側空け抑止効果が見込まれるのか。試作機を開発している時点ではまだコロナ禍のさなかということもあり、大勢の人に試してもらうような大がかりな実証実験はできなかった。
そのため、限られたメンバーで有効性を確認したところ「乗り込み位置がわかりやすい」といった声が多くを占めたという。2列で乗る人が後に続けば、歩く人はいなくなるはずだ。
片側空け抑止機能は既存のエスカレーターに追加で設置することが可能だ。大阪メトロは他駅のエスカレーターに設置することについて「公表した内容がすべて」であり、そうした計画はないという。しかし、もし有効性が確認されれば、大阪メトロだけではなくほかの鉄道事業者の駅のエスカレーターにも広がるかもしれない。
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