効果ある?「片側空け」防ぐエスカレーターの性能 どんな仕組みなのか、日立が明かす開発秘話

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鉄道会社などではエスカレーターで歩かないための対策として2列で立ち、片側を空けないことを推奨している。歩きたい人の進路をふさぐためだ。

鉄道会社の中には、係員がエスカレーターの手前で「2列で立ってください」と呼びかけている例もある。その場合、利用者はちゃんと係員の指示に従う。しかし、「係員がいるときは2列で立ってくれても、いなくなれば元に戻ってしまう」(鉄道会社幹部)という声もある

条例でエスカレーターでの歩行行為を禁止する自治体もある。埼玉県では「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」を2021年から施行しており、利用者の義務として「立ち止まった状態でエスカレーターを利用しなければならない」、管理者の義務として「利用者に対し、立ち止まった状態でエスカレーターを利用すべきことを周知しなければならない」としている。名古屋市でも同様の条例を2023年に施行している。こうした動きは今後、ほかの自治体でも増えるかもしれない。

エスカレーター 歩行禁止 ラッピング
歩かないよう利用者に注意するラッピングを施したエスカレーター(記者撮影)

メーカー側も対策に動き出した。日立ビルシステムは片側空けを抑止する新機能を搭載したエスカレーターを開発しており、2025年1月開業予定の大阪・北港テクノポート線の夢洲(ゆめしま)駅に、ホーム階と改札階を結ぶ3台並列のエスカレーターとして設置される。

「万博の玄関口」輸送効率アップを狙う

どのような仕組みで、片側空けを抑止するのか。日立ビルシステムの担当者に話を聞いた。

まずは開発の経緯から。大阪メトロ中央線のコスモスクエア駅から延伸する形で工事が進む北港テクノポート線の新駅である夢洲駅は、2025年4月から開催される大阪・関西万博の最寄り駅となる。

万博期間中は1日当たり約12.6万人が夢洲駅を利用すると想定されている。朝、万博に行く人と夕方、万博から帰る人に分ければ、行き・帰り、それぞれ6万人ずつ。多くの来場者はホーム中央にある3台並列の上りエスカレーターを利用する。2分半間隔で列車が到着するので、列車から降りた客には速やかにホーム階から改札階に上がってもらわないと、次の電車が来たときにホーム上が大勢の人であふれてしまう。

新開発のエスカレーターは、片側空けによるホーム上の行列を解消するため、2列で立つよう誘導し、輸送効率を高めることを狙いとしている。

素朴な疑問として、片側空けの場合も空いている片側を歩いて上る人がひっきりなしにいれば輸送効率は2列立ちと変わらないような気もするが、歩行する場合、歩く人の前後に間隔ができてしまうので、2列立ちのほうが輸送量は多くなるという。つまり片側空けは、歩く人にとって時間短縮のメリットがあったとしても、全体としての輸送効率は悪くなるのだ。

なお、大阪メトロにこのエスカレーターを設置する狙いを尋ねたところ「短時間に多くの人を運びたいという理由はもちろんあるが、エスカレーター上を歩くのは危険であり、安全のため立ち止まってほしいというのが最大の理由である」(広報戦略課)とのことだった。

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