円安インフレに政府が促し「日銀利上げ」の転機 住宅ローン金利は引き上げへ、景気減速は否定

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2022~2023年にかけて、日銀は円安が輸入物価上昇を通じてインフレを起こす力だけでは不十分だとして、緩和を続けてきた。しかし、円安が続いて輸入物価が再び上昇に転じたうえ、企業の価格設定行動が変わったとして、7月の会合では為替が物価に与える影響が大きいことを事実上認める姿勢に転換した。

円安と利上げが直接結びつくことは別のリスクもある。

「もし円安が進んだ状況で利上げしていれば、円安抑制のためだとみられ、今後、催促相場を招きかねなかった」とみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は指摘する。通貨安で際限のない利上げを求められれば新興国のような通貨危機に足を踏み入れかねない。

6月下旬以降、1ドル160円台で高止まりしていたが、7月11日に発表されたアメリカの消費者物価指数の伸び率が市場予想を下回り、円高に振れたところにそこに財務省が円買いの為替介入で追い打ちを掛けたもようで、流れが変わったと唐鎌氏はみる。

「今回は円安が修正された地合で迎えた会合で、円安抑制の政策という雰囲気にならなかった」。

利上げ「0.5%の壁」を越えるのか

今後、利上げはどこまで進むのか。

ゼロ金利政策が導入されて以降の四半世紀で2回あった利上げ局面では0.5%が上限となった。ただ、この日の会見で植田総裁は「0.5%は壁ではない」と否定。経済に対して緩和的でも引き締め的でもない中立な金利に到達するにはまだ余裕があるとも強調した。

経済に対して中立な金利は推計で幅があり、マイナス1.0~0.5%程度。物価目標の2%とあわせて考えると1%までは引き上げられる計算だが、4月の会見で植田総裁は、それぞれの推計も幅があるため決め打ちできないと語った。

今回の利上げを受け、今後の個人消費はじめ景気がどうなるか。アメリカの金融政策を受けた為替ひいては物価動向はどうなるか。

植田総裁は会見で「物価見通しが実現していくとなれば、引き続き政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整する」と述べるにとどめた。「利上げの失敗」となれば過去のように再び政府から批判されかねず、社会からも厳しい目で見られかねない。

植田日銀の予断を許さない政策運営は続く。

黒崎 亜弓 東洋経済 記者

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くろさき あゆみ / Ayumi Kurosaki

特に関心のあるテーマは分配と再分配、貨幣、経済史。趣味は鉄道の旅、本屋や図書館にゆくこと。1978年生まれ。共同通信記者(福岡・佐賀・徳島)、『週刊エコノミスト』編集者、フリーランスを経て2023年に現職。静岡のお茶屋の娘なのに最近はコーヒーばかり。

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