任天堂、岩田社長なき後に見えた本当の弱点 「健全すぎる財務体質」は何を意味するのか

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極端な話になるものの、本業がいくら赤字であってもキャッシュがあれば、企業が潰れることはない。任天堂は2012年3月期に432億円、2014年3月期に232億円の最終赤字(純損失)を出し、当時は先行きが危ぶまれたものの、実は財務上はびくともしていなかった。任天堂が本当の意味での経営危機を迎えることは、当面考えられない。

大胆な投資を仕掛けられていない証左

一方、健全すぎる財務体質は、任天堂が大胆な投資を仕掛けられていない証左でもある。任天堂の自己資本比率は直近で約88%。これも日本の上場企業では極めて高い水準。もっと投資に資金を投下できる余裕は十分以上にあるが、任天堂は投資先に困っているのかもしれない。

ヒントは、「投資活動によるキャッシュ・フロー」にある。投資活動によるキャッシュ・フローとは、設備投資や余剰資金の運用など、将来の利益獲得と現在の事業活動を維持するための投資の中身を示している。

2015年3月期の投資活動によるキャッシュ・フローを見てみると、定期預金の預入による支出が7566億円ある一方で、定期預金の払い戻しによる収入は6511億円だ。同様に有価証券及び投資有価証券の取得による支出が7363億円あり、償還もほぼ同額ある。

これは手元現金を運用し、利回りを少しでも稼ごうとしてる証拠だ。もちろん、任天堂も収益拡大のため、手をこまぬいているワケではない。ただ、任天堂の収益拡大の基盤となる研究開発やソフト開発に投じられる人員や、それによって得られる需要の拡大には限界がある。今まで蓄積した資産の運用に困っているから、定期預金や有価証券を購入したりするのだ。

自己資本の運用先に困ってるからこそ、任天堂は自己資本がどれだけ利益を生んだかを示すROE(自己資本利益率)が低い。当期純利益を自己資本で割り出すROEは、過去5年で最も高かった2015年3月期でさえ4.8%だ。

ゲーム会社のROEが低いかというとそうではない。驚異的なROEをたたき出すゲーム会社はある。スマホ向けゲームの大ヒット作「パズルアンドドラゴンズ」、パズドラの略称でおなじみのガンホー・オンライン・エンターテイメントだ。

ガンホーのROEは2013年12月期に136%、2014年12月期は61%を記録した。単純に言うと、2013年12月期は100円の元手で136円、2014年12月期は少し落ちたとはいえ61円の利益を稼ぎだしたことになる。銀行の1年定期預金の金利が約0.02%と考えれば、このすさまじさが理解できるだろう。

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