任天堂、岩田社長なき後に見えた本当の弱点 「健全すぎる財務体質」は何を意味するのか
ガンホーはパズドラの恩恵を受けて急成長を遂げた。2012年12月期の売上高は258億円にすぎなかったが、2014年12月期には1689億円と、7倍近くとなり、営業利益も625億円と規模で圧倒的に劣る任天堂を上回っている。
ガンホーにはどの業種・業態にもかつてなかった特徴がある。それは、収益を特定の一つのソフト、つまりパズドラに依存していることだ。パズドラの国内累計ダウンロードは7月下旬時点で3700万を突破。海外でも複数の国で100万単位のダウンロードを記録している。稼働ユーザー数も順調だ。
ガンホーはパズドラ依存でも収益を安定化
ガンホーの売上高はパズドラだけで9割強を占めている。単一事業ならまだしも、単一製品・ソフトにここまで収益を依存してる上場企業を筆者はほかに知らない。ゲームをしたことのある読者なら分かると思うが、ゲームはすぐに飽きられる。だからこそ、ヒットを飛ばそうと年間何万というゲームタイトルが世に誕生し、そして消えていく。
パズドラは世に出てから4年目を迎えてもなお順調だ。ゲームのライフサイクルは短いから、パズドラに極度に依存するガンホーはリスクが高い企業だと筆者は考えていた。だが、ガンホーの考え方は違う。単一ゲームソフトでも、やり方次第で安定した収益確保の可能性を示した。確かに将来は分からないが、ここまで長く愛されるゲームで収益確保できるのはあらたな考え方、今までの常識を覆すビジネスモデルといえるかもしれない。
任天堂も過去30年にわたって、今までの常識を覆してきた。みずからがゲーム市場を大きく広げてきたのだ。ゲームセンターや宿泊施設などにしかなかったゲーム機を、家庭用のファミリーコンピューターとして根付かせ、小中学生を中心として遊びの中にゲームという文化を根付かせた。
その後、ゲームが技術の進歩ととともにどんどん高度化し、子どもや一部のゲーム好きな大人に限った市場になっていく中、普通の大人や高齢者なども取り込む仕掛けをつくったのも任天堂だ。携帯用ゲーム機「ニンテンドーDS」や家庭用ゲーム機「Wii」は、従来になかったゲームの遊び方を生み出し、任天堂が飛躍的に成長するきっかけとなった。
スマホで大ヒットしたゲームはパズドラだけに限らず、任天堂にもこの分野でのチャンスはある。今年4月に表明したディー・エヌ・エー(DeNA)との提携によるスマホゲームの共同開発は、その一歩だろう。
とはいえ、豊富すぎる手元資金、健全すぎる財務体質を少しぐらい崩してもいいというぐらいの覚悟で、これまでになかったゲームの新しい価値の創出に挑まなければ、「簡単に潰れはしないけど、なんだか面白みのなくなったゲーム界の王者」になりかねない。黒字基調を取り戻してきた今だからこそ、もっと大胆な決断をしてもいいのかもしれない。
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