振興銀行“査定”の適否、最終譲渡直前に引当増

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 しかし被災地の金融機関を除けば、震災の影響で引当金が著しく膨らんだ、という話は聞かれない。貸出先の情報量が乏しかったとはいえ、査定にかけられる期間は約半年間あった。適・不適の線引きをした預保の資産査定があいまいだった、という見方もできよう。また金融庁も預金保険法に基づき、承継銀行が保有する資産を「適当」と確認している。適資産に対し半分近い引当金は、当局の“お墨付き”を疑われかねない。

引当が後に利益化も

一方、今回の発表では自己査定後の債権分類が詳しく開示されなかった。127億円の引当の妥当性は判断できない。かつて、旧・日本長期信用銀行(現・新生銀行)が譲渡後、貸し出しの回収が進み、多額の引当金の戻し入れが利益として計上され、社会的な批判を受けた。結果的に引当金が“過剰”だったとみられたからだ。仮に、承継銀行への適資産の引当が相当保守的ならば、今後、同じ事態が生じる可能性もある。

資産査定がずさんだったのか、今回の引当が過剰なのか。最終譲渡先の決定が迫る中、疑問は尽きない。

(井下健悟 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2011年10月8日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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