渋沢栄一「論語と算盤」を形作った少年時代の原点 「近代経済の父」が14歳で始めた商売に感じた不満

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栄一は、江戸時代の終わりに農家の家に生まれました。当時のふつうの農家とはちょっと違います。お父さんにビジネスセンスがあり、かなりもうかっていました。

お父さんは、周りの村から染料のもととなる藍の葉を買って集め、それを「藍玉」という製品に加工して売る商売をやって成功したんです。江戸時代の農家といえばお米をつくって年貢をおさめるイメージだけど、仕入れから製造・販売まで手がけて、栄一の家は現代の商売に近いものをやっていたんだね。

「本を読んでいて溝に落ちました」

14~15歳くらいの栄一は、藍の葉を買いつけるお父さんについてまわり、そのうち、一人で買いつけができるようになっていました。

そうして商売をする中で、強い疑問を持つこともありました。お金が足りないときに領主が「御用金」といってたびたびお金を出すよう命じるのですが、そのとき「さっさと出せ」という態度をとるのです。「農家はお金を出して当然というあの態度は何なんだ」と不満を感じていました。

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栄一はよく本も読んでいました。6歳ごろから『論語』をはじめとする書物を習い、読書に夢中になります。12歳のお正月のときなんて、本を読みながら歩いていたら溝に落ち、晴れ着を汚してお母さんに怒られたんだって。

お父さんも「本ばかり読んでいないで、仕事を手伝いなさい」と言いました。このときは、読書と仕事が別々のものだったけれど、大人になって、つなげることができたわけです。

後年、渋沢栄一が書いた『論語と算盤』は、今もとても人気のある本です。一見つながらない『論語』と「算盤=経済」をつなげたのがとてもおもしろい。

この本には、人として正しくあることと、お金をもうけることとを両立させなさいということが書かれているんです。

■出展
『渋沢栄一自伝 雨夜譚・青淵回顧録(抄)』渋沢栄一著  角川ソフィア文庫
『渋沢栄一 よく集め、よく施された』武田晴人著  ミネルヴァ書房
『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』島田昌和著 岩波新書
齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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