世界の自動車業界は世界的な経済低迷で減速するが、見通しは安定的《ムーディーズの業界分析》

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 欧州メーカーの半期業績と通期見通しに格差が見られる。プジョーとルノーの2011年上期の営業利益率はそれぞれ1.8%と1.1%であったが、メルセデス・ベンツの同期のEBITマージンは10.0%、BMWは13.3%、フォルクスワーゲンは7.9%。プジョーの自動車部門の営業損益は前回予想比で3億ユーロ減、下期の損失計上を予想している。フランスのメーカーの11年下期の業績の悪化により、こうした業績格差は年末までは続きそうだ。

ほとんどの自動車メーカーが欧州市場で利益を上げられないもう1つの要因は、過剰設備である(下図)。金融危機とGMやクライスラーの倒産で生産設備の大幅な削減を迫られた米国とは対照的に、欧州では政府の介入でスクラップ・インセンティブや負債による資金調達がなされたが、需要低下を反映した生産能力調整はなされなかった。投資額に見合う利益を生むことができるまで、設備能力の調整は中長期的に取り組むべき課題である。

欧州の自動車メーカーは、新規プラットフォームの開発(排出量規制を満たす新型エンジンや駆動テクノロジー)、代替エンジンコンセプト(ハイブリッドや燃料電池テクノロジー、電気自動車)などの設備投資を削減する方策を探っている。これに対しては2つの異なる戦略がとられている。BMWと米フォードのプロジェクト・シェアリング契約(PSA)のように、プロジェクトベースにジョイントベンチャーを作ること。あるいはルノー、日産やダイムラーの株式持ち合いのように、他の自動車メーカーと資本参加を通してより深い結びつきを築くことである。これらの戦略は共に、コストシェアリングや規模の経済を達成し、成功しているようであるが、生産性の向上については限定的と見られる。

図3:欧州の過剰設備

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