スマイルアップCCO語る「ジャニーズ問題の贖罪」 「金銭補償は救済の一部」と外部招聘の山田氏
私は弁護士として企業のコンプライアンス対応に取り組んできた。スマイルアップでの仕事も、コンプライアンス全般の責任者として、再発防止特別チームから提言された再発防止策の実施が中心になっている。
コンプライアンスではハードの体制づくりとソフト面の教育が重要だ。再発防止特別チームから「取締役会がきちんと開催されていない」「社内規定が整備されていない」などの問題が指摘されたが、今は仕組みがきちんと回るようになってきている。私も月1回の取締役会に同席している。
ソフト面も過去には情報を秘密にするような文化があったのかなと思うが、CCOである私にも情報を積極的に上げてもらっている。組織風土の問題は、外部のいわば異物が入り続けることで改善を図っていくところだと考えている。
――芸能業界特有の難しさは何か感じますか。
スマイルアップは芸能事務所ではないし、私も業界を深く知っているわけではないが、コンプライアンスという観点で言えば、一般企業と共通するところが一定程度ある。体制づくりや風土づくりでそう変わるところはない。
あえて挙げるなら、芸能事務所はタレントという人を扱っているところだろうか。事務所にとってタレントは取引先でもあり価値の源泉でもある。一層注意深く対応する必要がある。
金銭補償が「終わり」ではない
――「ビジネスと人権」の文脈では、「取引関係を利用して積極的に関与し問題の是正に貢献すること」が企業に求められています。旧ジャニーズ時代の取引先企業とはどういう対話をしているのでしょうか。
4月以降は新会社(スタートエンターテイメント)が交渉相手になっていると思うが、広告クライアントなどから「こういうものにきっちり対応してください」という要望書をいただくケースが複数あった。
個社ではなく複数社によるコレクティブアクション(共同行動)という形で要望を受けて、私が補償や再発防止の状況を説明するということもあった。おそらく企業の間で「こういうところを監視していこう」「こういうところを解消すれば取引できるのでは」などと議論されているのだろう。
――山田さんの諮問機関の位置づけである「外部アドバイザリー・ボード」ではどんな意見が交わされているのでしょうか。
外部アドバイザーの吾郷眞一弁護士はビジネスと人権の専門家で、黒松百亜弁護士は子どもの人権に詳しい。お二人とも強調されているのが、金銭による補償は被害者救済の一部でしかないということ。
とくに謝罪が非常に重要だと繰り返しおっしゃっている。真摯な謝罪が救済のスタートであり、お金を払えばそれでいいということでは絶対にない。東山社長も被害者と対話をする際にはまず謝罪をさせていただいている。
私も外部アドバイザーのお二人も弁護士。(受けた被害に対する)損害賠償請求はこのぐらいの金額になるという共通認識があるが、人権侵害の救済はお金ですべてが解決するものではないということをつねに心にとどめている。
被害者に対する心のケアは基本的に終わりがないという意見もいただいている。スマイルアップはいずれ廃業する方針だが、心のケアの受け皿がない限りは廃業することはできない。
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