第三者委員会が指摘した東芝の"病根"とは? 「組織的に不適切な会計処理をしていた」

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今回の調査では、個別に見ると「不正」といえなくないものもあったが、担当者が会計知識を間違えていたり、(損失を)先送りすることはさほど違法なことだと思っていなかったり、特に半導体の在庫評価みたいに自分たちの主観で判断したりといった、違法の認識がないものも多い。

昨今、「不適切会計」というのが実務でよく使われているし、会社から依頼されたときも「不適切会計」という言葉だった。言葉を統一するという意味でも、大きな言葉として「不適切」という表現とした。

――1500億円もの利益の水増しがあったが、資産の減損や、繰延税金資産の取り崩しといった影響はあるのか。

影響があるかと聞かれれば当然あると思う。だが、会社の規模が相当なものなので、1500億円が5年間にわたって影響しても、たとえば利益剰余金がなくなってしまうことはないと思う。

――意図的な利益カサ上げについて、東芝側の会見で「不適切な会計をさせていたという認識はない」といった、報告書を否定するような田中久雄社長の発言があった。

調査委員会が2カ月にわたって資料、ヒアリング、データを総合して事実認定をした。その内容は報告書のとおりだ。ただ、減損や繰延税金資産といった業績修正額に派生するものについては、今回の調査では範囲外。そこについては会社側が新日本有限責任監査法人と検討しているだろう。

――監査法人が機能していなかったことをどう認識しているのか。「隠したからわからない」では、監査法人の意味がないのではないか。

監査委員会のチェック機能については、おっしゃるとおり。ただ、諸々の問題が会計監査人のアンテナに引っかからなかったからといって、即ダメとはならない。この調査は、あくまで東芝の会計処理の適切性に関するもの。会計監査人の監査が適切であったかという点については、別途評価しなければ公平でない。

西田氏の圧力があったとは認識せず

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第三者委員会の会見は45分ほどで終了した(撮影:尾形文繁)

――過去にライブドアやカネボウといった刑事事件に問われた案件もあるが。

そういったことは調査の範囲外なのでお答えしづらい。過去の事例と照らし合わせて考えていただきたい。

――報告書にある「実力以上にカサ上げされた予算」とは、誰がどのような意図で作ったのか。西田厚聰・現相談役によるプレッシャーはなかったのか。

予算は各カンパニーの人間が作ったものをコーポレートの財務部門が取りまとめたと考えられる。作成した時点では達成できると見込んで作ったと思うが、その後達成できない状況が起きて、このような事態となった。予算作成時点で西田氏によるプレッシャーがあったとは認識していない。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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