東芝の「鉄道自動運転」技術、実用化へ一歩前進 長野電鉄と実証実験、基本動作の検証が完了
そこで現段階では、運転士が不要となるレベル2.5やレベル3の自動運転の実現に各社が力を注ぐ。
レベル2.5の自動運転はJR九州が先行しており、実証実験を経て3月から香椎線で営業走行にこぎつけている。その技術は既存の自動列車停止装置(ATS-DK)をベースとしたもので、線路内に地上子と呼ばれる地上設備を追加設置することでその機能を強化し、ATC並みの運行安全性を確保している。
「地上子」追加設置不要のシステム
東芝グループの東芝インフラシステムズもレベル2.5に対応する自動運転システムの開発に力を入れる1社だ。同社の自動運転システムの売りは、線路内に地上子を追加設置する必要がないという点だ。追加設置といっても既存設備の性能次第では地上設備を抜本的に見直す必要がある。その点で東芝の自動運転システムは地上子の追加設置にかかる設備投資や維持管理費などのコストを削減できるというメリットがある。
そのために大きな力を発揮するのは、車両前面に設置されたステレオカメラとライダー(LiDAR)である。ステレオカメラとは2つのカメラの視差から距離を計測できるカメラで、ライダーとは近赤外レーザー光を照射して、その反射光のタイミングを解析して距離を計測する装置だ。夜間などステレオカメラが苦手な状況では、ライダーが威力を発揮する。
走行中はGNSS(汎地球測位航法衛星システム)を活用しながら、ステレオカメラとライダーがランドマークとなる対象物の位置を確認し、地図データベースと照合して車両の正確な位置を検知する。トンネルの中や高架下などGNSSによる位置測定が困難な場所では、慣性センサを活用して列車の位置を推定する。地図データベースには位置ごとの最適な速度情報も組み込まれており、従来は運転士の経験に頼っていた速度制御を自動で行うことができる。
駅に近づくとステレオカメラやライダーが停止位置目標を認識し、GNSSや慣性センサを使って、自車の位置を把握、さらに速度の情報も活用して運転支援装置が加減速を制御し、停車駅の正確な場所で自動停止する。「実証実験では±50cm以内の停止位置精度を確認した」という。
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